それまで日本のモデルガン界においてPPK といえばタニオアクションの物しか存在していませんでした。こだわりの cmc から発売されると聞いてどれほど多くのマニアが期待した事でしょう。
しかし、発売されたモデルはシングルアクションのみで、戦時中の完全な外観を備えているのに、なんとも不完全燃焼に終わってしまいました。
1枚目の写真は、ブローバックモデルでハンマーが鉄製です。こちらは、スタンダードです。 ホルスターは、ドイツ軍の純正、本物です。けっこう高いです。海外から買いましたが、今でもドイツ軍のホルスター関係はたいへん高価です。
写真のモデルは、実物大戦中のワンピースグリップを取り付けています。
戦時中はPPK には
すべてワンピースグリップが付いていました。ツーピースグリップが出てくるのは戦後のことです。写真のように cmc のPPK は、実銃サイズだと思います(ネジ穴が少しずれています)。
こちらは、MGC 3型タニオアクションと並べてみました。 どちらもほとんど同じサイズです。MGC は、戦後版を再現しており、スライド先端下部の 切込みがなだらかです。MGC のリアサイトは戦時中のPP のようです。この形のリアサイトは1944年から45年にかけてPPK でも製造されていますが、総じてMGC の物は、戦後に フランスで作られた22口径の物にそっくりです。
MGC のグリップは、エーレンバッフェ?、英語ならパーティリーダーと言って ナチス党か労働何とかの優秀者にのみご褒美で与えられたPPK に装着されていた物です。 したがって、戦中版を再現している cmc にこそふさわしい物です。
そこで写真用に cmc に載せてみました。細工をすれば取り付けられそうです。 写真のごとく cmc のデザインはよく再現されています。 トリガーガード付け根が実物では段下がりに切削されていませんが、大戦後期に見られる形で cmc タイプの方も多く存在します。
まことに残念なシングル・オンリーメカです。 cmc のトリガーバーを押し上げている クリップのような板バネは、飛び歩いて紛失の恐れがありますのでグリップを外したら 作動させないことが肝心です。私は、しっかり紛失しました。 写真のリコイルスプリングは、ゆるい物に変更されています。本体にダメージを与えないためです。自分のスタンダードの物は、強烈なリコイルスプリングでハンマーピンが曲がっています。
左は、マルシンのプラ製モデルガンですが、実物をよく再現しています。 ワルサーP-38 と同じ構造です。マルシンの高いリアサイトは戦後のワルサー版を再現しています。
ついでにMGC のスライドとマルシンのスライドを cmc のフレームに被せてみました。
みなさん大きさは忠実なのでしょう、動作はできませんが入れることは出来ます。
両者共に戦後版のスライドカットです。
メカニズム
バラシ、組立は簡単に行えます。
シングルになったのは、主に価格の面からだったと思います。
シアは、MGC のデラックス版HSc の機構にそっくりです。
この個体は、リコイルスプリングの上のハンマーピンが少し曲がっています。
うーーん、見たくなかったシアの押さえバネ。まるでタニオメカのようです。
cmc 崇拝者としましては、たいへん残念なところです。
シアの飛び出た部分をトリガーバーで引いて撃発します。
トリガーバー上部の盛り上がりは、スライドに押されてディスコネクターとなります。
ファイアリングは、プレート式で、この写真の物は曲がっていますが、初期の物は、まっすぐな物もあります。安全対策でこうなったのでしょう。
左側のフレームに鉄板状の物が見えますが、エジェクターです。
右がアルミ製のブローバックカートです。左はスタンダードの真鍮製です。
アルミ製は、当然ながらたいへん軽いです。
ブローバックモデルのデトネータです。ハンマーは鉄製です。
Gun誌 広告
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六人部氏の手作りによる木製グリップにガンブルー仕上げの広告が Gun 誌 に掲載されたのは昭和49年3月号です(1974年)。あの素晴らしい写真に どれだけ多くのファンがドキドキさせられたか判りません。
しかし、小さなボディにダブルアクションの複雑メカを組み込んで採算ベースに乗せることは 難しかったようで、金属モデルではとうとう再現されませんでした。また、プラ製になっても マルシンのPPK/S が素晴らしい出来栄えですが、PPK/S ではなく、PPK としては再現されぬままに終わってしまいました(PPK/S はPP フレームなので長い)。
写真左のマルゴーPP も cmc より実物に近いですがシングルアクションです。 金属モデルガンでは決定版の無いままにPPK 、PP は52年規制により消えてしまいました。 ワルサーPP 、PPK はダブルアクションをオート拳銃に導入した歴史的な名銃ですが、とうとう僕たちは手にする事はありませんでした。そして、私は今でも決定版をすっと待ち続けています。
2008年11月、マルシンからついにプラ製PPK 戦後版・発売予告あり!