コクサイ・モーゼルHSc

亜鉛合金製・金属モデルガン
写真x
写真00

コクサイの初期の頃に発売されたHScです。 タニオアクションで、MGC と同機種で競合しました。
設計はオリジナルでコピー品ではありません。セレーション(スライドの滑り止め)の 本数が少ないのでMGC 製品とは、はっきり判別できます。


MGC とほぼ同時に登場

写真01

写真02 発売は1967年の終わりごろではないかと思います。1968年02月号のGun 誌にカラー写真が出ています。が、これは六人部氏の原型で鉄製だと思います。セレーションの数が実銃どうりです。製品版で簡略化されています。

木製グリップは、六人部氏の手作りでしょう。このままプラ製のグリップを作っていますので、コクサイの グリップはMGC に比べて相当に厚いです。マガジンボトムも製品版では亜鉛製の厚いものに変更されています。


MGC と比較

写真03

MGC 製品は右側です。外観は、ほぼ同じですが、MGC はスライドとフレームのかみ合わせ 部分に凹みがあります。むかしは、ここにホッチキスの針のような針金が入っていました。

コクサイ製品は、以下の違いで写真でも簡単に判別できます。

  • セレーションの数が少ない
  • ハンマー・スパーが飛び出ている
  • マガジンボトムが厚い

写真04

大きさもほぼ同じです。


写真05

ですが、握ってみるとコクサイの方が相当に厚いです。
これは、グリップの厚みによります。前述のように六人部氏の木製グリップの形のまま プラスチック・グリップを作ったのではないかと思います。木製グリップは、強度的なもので厚くなります。


写真07

上面は、MGC の方が凝っています。波型の反射防止加工がされています。また、MGC のリアサイトは 別部品です。MGC の力の入れようが判ります。


刻 印

写真06

スライド刻印は、実物と同じです。モーゼルマークまでコピーしています。
あと、3本線があったらまったく実物どうりですね。


メ カ

写真08

全バラです。タニオなので複雑ではありません。スライド上部内側の処理など精緻な感じを受けます。タニオレバーの戻り力は、トリガースプリングのみです。


タニオアクション

写真09

トリガー位置を実銃と同じにするためには、回転力を水平力に変える必要があり、 必然的にこのようなメカニズムになります。


写真10

この機構は、MGC のP-38 そっくりです。MGC の方が数年先に発売しています。
MGC の物は、フレーム内にガイド役の溝を付けてスムーズに動くように設計されています。
タニオレバーの戻り用巻きスプリングもでっかい物が付いています。
小林氏の天才的設計が読み取れます。


写真15

MGC のP-38 は、フレーム右側に機構がセットしてあり左側には何もありませんが、コクサイの HScは、左側に機構があるため、右側はのっぺらぼうです。


どちらかが参考に?

写真11

左がコクサイで右がMGC です。バレル固定のワンタッチ解除機構ですが、この部分は 実銃と大きく違った構造なのに、モデルガン同士は、お互いがたいへん似ています。フレーム前方の軸を中心に回転運動です。


イラスト

実銃は、左の絵のように垂直運動です。小林氏と六人部氏は、このころは交流がなかったようなので 、どちらかが、製品を参考にして作ったのではないかと思います。


 原型製作師

写真12

六人部氏は、このころ中田商店を離れフリーでしょう。モデルガンの原型を請け負っていたようです。原型製作師としましては、鉄製で原型を作り、納入すれば用は終わりですが、製品としては亜鉛の材質を考慮した 変更がなされるべきです。が、原型形状のまま作られている写真の亜鉛パーツは、もろくてすぐに壊れます。 特に右上のセフティは、これで折れない方が奇跡だという薄さです。真ん中のタニオを受けるスライド内のパーツは 、初期の段階でスチールに変更されました。左のトリガーも、今回レストア中に折ってしまいました。
「あれ、なんだか重いな。くっそー、えいっ」と思いっきりトリガーを引いたらボキっと折れました。 ハンマースパーは、スライドの縁に直接当るのでこれも折れやすいです。

MGC の小林氏が製品化、量産化まで面倒を見なくてはならない事に比べると六人部氏のほうが、そうとう楽です。 事実、彼の作った中田製品はファイアリングブロックが全滅です。そう考えていくと、モデルガン業界では 神のような2大巨頭を「六人部、小林」の順で呼びますが、私に言わせたら「小林、六人部」の順番でもいいのではないかとも思います。


レストアのために

写真13

今回登場のHScは、レストア依頼のためにバラそうとしましたが、まったく動きませんでした。
本来、一瞬でスライドとフレームは分離できるはずです。そこで、仕方なく矢印のピンを抜いて 上下に分解しました。このピンは、テーパーになっていて右側にしか抜けませんでした。個体差もあるかもしれませんが、テーパーピンは危険です。反対から叩くと壊してしまうかもしれないので注意です。


写真14

バラしてみると分解ラッチが、フレームに当って下がりきっていない事が判りました。
写真のようにカットして良くなりました。下部写真のごとく下降していないと、ワンタッチで バラせません。


なつかしのGun誌

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HScの記事をGun 誌で探していたら、1980年10月号にジャックさんが綺麗な写真とともに記事を 書いておられます。戦後版のHScです。戦中版とはフレーム内の後端形状が違います。


写真17

目次です。いやー懐かしいですね。イチローに憧れ、タークの難解記事にうなり、床井氏の クールなレポートを読み、ジャックに燃え、和智さんに笑っていました。自分も青春だったなぁ。
和智さんは、現在エアガンのKTW の社長です。


おわりに

写真18

実銃では、ワルサー社のPP が爆発的に売れたため対抗馬でモーゼル社が総力を上げて 開発したHScです。しかし現代では、集弾性能も良くないそうで消え去っています。

コクサイのHSc は、MGC とほぼ同時の競作でした。どちらのほうが売れたものかは知りませんが、現在ではコクサイの方が見る機会は少ないです。「六人部 対 小林」 のエンジニア対決を製品に垣間見る事ができました。


おまけ

分解図のJPG が別窓で開きます。→  分解図へリンク


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