写真00
タナカから販売されていたトラップドアーのモデルガンです。↑クリック拡大します。
正式にはスプリングフィールド1873と言います。フリントロック式からパーカッション式に 銃が進化したあと、センター打ちの薬きょう式が流行りだした頃の銃で、米軍正式のパーカッション式マスケット銃が基になっています。
南北戦争後のインディアン戦争に活躍した非常に歴史的な銃です。
 
ライフル型が普通なのですが、タナカはカービン銃をモデルアップしています。
ライフルは銃身も長いので作るのもたいへんだし、価格も高くなるので敬遠したのでしょう。
どのみち、このモデルはマニアックな物ですので、多くは生産されなかったのではないでしょうか? おかげで今ではオークションなどでもかなりのお値段になっていますね。

外 観

写真01
機関部にはくっきりとスプリングフィールド工廠のマークが刻まれています。
ここに紹介したモデルは、ジェロニモタイプなのでニッケルメッキ風ですが、当初に発売された物は ガンブルー仕上げです。

写真02
機関部のヒンジのところにも刻印があります。
ヒンジから飛び出た部品がカートをはじき出します。
 
右側から伸びてきた撃針がセンターに向かう膨らみがよく判ります。
アメリカ人って言うのは、先進的な部分と強い保守的な部分を併せ持っているようです。 この機関部を見ると「とりあえず間違いないマスケットの部品を使ってセンターファイアを 作ろう」という発想が見て取れます。リスク・ファクターを少しでも減らす良い方法だと思います。
 
CPUを変えたらついでにOSやアプリも一緒に変えてしまおう・・なんてのが最悪パターンで 一つずつ順を追って変えていく方が業務に支障を来しません。それと同じように 新しい技術である金属薬きょう式を取り入れるのに最小限のリスクのみを抱えて設計されています。 大きな変更を伴うプロジェクトのお手本といえるでしょう。
写真03
このように機関部がまるでドアのように開きます。ですからニックネームがトラップドアでしょうね。

写真04
この銃の時代は、先込めのパーカッション式から元込め式金属薬きょう式に変わる頃です。
まだ、センターファイアが本流になるかどうかも判らない時代ですので、とりあえずパーカッション式を 改良した機関部での登場でした。
写真のように右サイドにあるハンマーは、マスケット銃と同じ物です。撃針は本来パーカッションキャップがあったところから斜め左方向へセットされて薬きょうのセンターをたたくようになっています。 タナカの物は、モデルガン安全指針にのっとりセンターは叩かないようになっています。

写真12
トリガーガード下には綺麗な彫り物があります。線が細いので判るようにここはスチール製です。 普通の黒モデルのカービンがどうなっているのかは知りませんが、このジェロニモはトリガーガードと それがねじ込まれている長いガードプレートはスチール製です。
もちろんバレルやボルトは亜鉛などの合金製で磁石はくっつきません。
 
※黒いモデルもスチール製
下記に赤い猫RRV 様から頂いた写真を 紹介していますように黒いモデルもトリガーガードはスチール製ですが彫刻は入っていません。

ラインナップ一覧

図35 各種のタイプが発売になりました。
上から登場順です。カービンタイプ、ジェロニモ2種、カスター将軍モデルです。 カスター将軍モデルは、フランクリンミントからも額入りで発売されています。

カービン、黒いモデル

写真19 Gun1+1/6〓OTHER SIDE〓 の赤い猫RRV 様から 写真を頂いて黒いモデルを紹介します。
赤い猫RRV 様、快く写真を使わせていただき有難うございました。
写真20
リアサイト上面には、ステンレス板が装着されています。
写真21
写真22
トリガーガードには、彫刻は入っていません。

ジェロニモ
エングレーブモデル

写真23 ブログ・Garland's Gunland  を書いているキノハナ 様から 写真を頂いてジェロニモ・エングレーブを紹介します。 快く写真をご提供していただき有難うございました。

写真24
写真25
キノハナさんは、中古入手とのことで前オーナーによって真鍮ビスが抜かれていますが、 見事な彫刻とチェッカーリングが見て取れます。木部の材質も、より良い物が使われているように見えます が直接比較していないので不明です。

カスター将軍モデル

写真28
tamarinn さんから珍しいカスター将軍モデルの写真を頂きました。ご提供有難うございます。
上写真はクリック拡大します。
すごく美しいモデルですね。出来も良さそうです。 このモデルは、右上写真に有るように額縁入りで販売された特別バージョンです。 おそらく、フランクリンミントくらいで発売されたのではないかと思います。12万くらいだったそうです。 翌年にタナカのカスターモデルがGun 誌の広告に載り、半値でしたので最初に購入した方はショックだったかもしれません。
 
銃身長の長いライフルモデルですが、カービン銃と並べないとパッと見、判りませんね。
写真29
フロントサイトは可倒式になっていて、ピープ式のリアサイトを使用するときは立てるのでしょうね。 クリーニング・ロッドはバレル長ほどは無く、ストックに入っているところくらいの長さだそうです。  

リアサイト

写真13
実銃のトラップドアは長い間多くの種類が作られていて、軍用、民間用とありますので リアサイトもいろいろな形があります。ネットで探してみましたが、タナカの物と 同じ物がありました。写真の右側二枚です。タナカは薄い鉄板をネジで止めていますが 実物はもっと厚い板をカシメているように見えます。


メカニズム

写真05
バレルバンドを外してハンマー基部のストック上のネジを一本外せばバレルは上方に簡単に外せます。
機関部は左サイドのネジを二本外せば簡単に・・・ってキツキツですが外れます。
トリガーガードのネジは、メカとは何ら関係ありません。
機関部の周りの木部の切削がぴったりなので機関部は外したネジをまた差し込んで軽く叩き出さないと 外せませんでした。
写真06
何と立派な機関部でしょう。ミロクのフリントロックライフルの機関部にそっくりです。
ハンマーは亜鉛のようですが、他のシアなどは鉄製です。

写真17
NRA の古い書籍の分解図から取ってきたトラップドア機関部が左上で、マスケットが左下です。右上の、タナカ機関部が実物を良く模していることが判ります。 トラップドアとマスケット銃の機関部が同じ物なのもよく判ります。

ミロクとそっくり??

写真07
写真は右が、ナポレオンの初代と左が亜鉛ナポレオンの機関部です。
これ自体にミロクが関与している証拠は何も無いのですが、私は出来映えからいってミロク製の 機関部では無いかと思っています。
この写真とジェロニモの機関部を比べてみて下さい。特に亜鉛ナポレオンの機関部によく似ています。 ジェロニモのハンマーは磁石が付きませんが、機関部内部のシアやタンブラーなど部品はすべてスチール製です。しかも厚みがあってゴッツイ部品なので、私はこの部分はミロク製なのでは無いかと推察しています。

ボルト詳細

写真08
このモデルガンの特徴である、薬きょうが飛び出てくるのは、黄色矢印の部品がバネで飛び出してくるからです。 この部分は、かなりバネが強いのでバラすのは簡単でしたが組み立てはコツが要りました。

写真09
すでに述べたようにセンターから外したファイアリングピンです。
このモデルガンは、52年規制後の製品なのでsmG 刻印の物しか存在しません。
したがってバレルもチャンバーとは繋がっていません。上の方のメカの写真でバレル下部に 黒い火薬煙バイパスのフタが見られます。ここまででチャンバーは終わっています。

写真10
機関部のロックも実物同様に再現されています。
左のカムのような物が右のレシーバーのミゾにはまり、ボルトをロックします。

写真11
このモデルガンは、細部にまで丁寧に作られています。このスプリングは、カートをはじき飛ばす パーツのスプリングですが、かなり強く出来ています。また、頭が写真のように平らに整えられていて 手間ひまが掛けられています

カート

写真26
通常商品には、写真のようなアルミ製カートが一発付属していたようです。よく飛ぶようにアルミで 作ったのでしょう。塗装されているので真鍮製のように見えます。 写真を頂いたtamarinn さんのカスター特別モデルには5発付属していたそうです。
 
刻印はユニオン・メタリック・カートリッジ で昔のアメリカ最大の弾薬メーカーです。 のちにレミントンを買収して現在に至っています。

登場広告

Gun誌の広告から見ますと、最初は普通の騎兵銃が発売され、翌年にジェロニモの2タイプが販売されました。 さらに翌年には、10cm長いライフルタイプも販売されました。これはレアですね。なかなか見ることは 少ないモデルでしょうね。 いずれもチェッカー入りストックの仕上げはたいへん良かったそうです。↓クリック拡大します。
 
写真14
1985年2月号(昭和60年)
写真15
1986年11月号(昭和61年)
写真16
1987年6月号(昭和62年)

ミコアームズ

写真27 52年規制が行われるすこし前に鉄製モデルガンの氾濫期がありました。その中で多くの逸品を 造っていたミコアームズからトラップドアーの生産も謳われました。
 
その後、すぐに規制が有り鉄製モデルガンは作れなくなりました。 おそらく、ミコアームズのトラップドアは生産されなかったのではないかと思っています。

※ 訂正です ↓



と、思っていましたら複数の方から販売されているのを見たとの情報を頂きました。 有難うございました。また、匿名様からミコアームズ製と思われる写真を頂きました。 貴重な写真を有難うございました。ファイアリングピンは抜かれているみたいです。 鉄製なのでオーナーが気を遣っているのでしょう。どこにもミコ製とは書かれていないそうですが おそらくミコ製でしょうね。下の写真は各クリックで拡大します。
写真31 写真32
写真33 写真34

実銃写真・マスケットと比較

写真18
ネットから取ってきたパーカッション式マスケットライフルとトラップドアの機関部比較です。

御 礼

たくさんの方に協力いただいて資料が充実するのは、楽しいです。
多くの記録を残したいのでみなさま今後もよろしくお願いします。

分解図

クリック拡大します。
分解図


動作状況ビデオ