とうとう入手してしまったJB シャノン。私は So-Sui さん主催のエングレクラブに名を連ねていたのに、実はエングレーブモデルを所有するのは初めてだという隠れエングレ・メンバーでした。このたび井浦先生の名品を入手出来て喜んでいます。
登 場
エランさんのチラシによると2002年の登場のようです。六研30周年ということですので30年前は1972年ですので wiki によると六研から最初の真鍮ガバメント が発売された年のようです。外 観
うーん、なんとも素晴らしいのですが、カメラの腕が付いていきません。マクロレンズなのですが、夕方に自然光なので ピントの合う範囲が非常に狭いです。情けない限りですが、井浦先生の超絶技巧の彫の凄さは感じてもらえると思います。
ゴフさんの実物写真
モデルガンの元になったモデルは、オーブリー社にお勤めだったゴフさん(ゴウフ?、ゴッホ?)の彫刻で、彼は素晴らしい作品を多く残しています。 コルト社員では無くって自営業のような感じでしょう、コルトだけではなく元々やっていた散弾銃やS&W リボルバーにも彫っています。ゴフさんは、お父さんも息子さんたちもエングレーバーとして活躍しました。↓写真のギザギザが特徴ありますね。井浦先生もきれいにコピーされています。
また、右写真のように細い横線を使用して陰影を出す方法を多用したモデルもあります。このあたりいろいろ試行錯誤のようです。
-
ゴフさんの歴史の一部のメリデン社のページ↓
http://meridenfirearms.com/people.html
- ゴフさんの検索語
Engraver William H. Gough
-
上写真のゴフさんの見事なショットガン作品↓
https://www.invaluable.com/auction-lot/william-gough-marked-a-h-fox-grade-ae-special-sho-469-c-21c4285903
ゴフさんも所属していたAH FOX 社は1911年ごろ倒産し1928年ごろにサベージ社に吸収されたようです。 しかし、ブランドとしては残っていて今でもすごい彫刻入りの散弾銃が売られているようです。
- こちら↓
https://connecticutshotgun.co/a-h-fox/
実物写真と共に
モノクロ写真は、下記の書籍からです。見比べると分かるのですが、ほとんど正確にコピーされています。 実物はコマーシャルモデルですが、モデルガンの方は、軍用モデルですので右側刻印が実物と大幅に違い一行刻印なので、それに伴い彫り方も変えています。 また左サイドにはインスペクターマークがあり、フレーム上部のUS プロパティ刻印もあるため、それぞれすこしデザインが変わっています。井浦先生の方が深彫りで、陰影などの付け方が非常に丁寧な仕上げになっています。
1911の彫刻モデルは、ほとんどがコマーシャルタイプです。そりゃそうですよね、国からもらった鉄砲を自分の物にして
彫刻するなんてよっぽど偉い人でないと無理でしょう。たまに軍用の彫刻も見かけますが後年に彫られたものもあるようです。
こちら1918年モデルに1930年以降に彫られたもの。URL はこのページ最下段に掲載。
上のモノクロ実物シャノンの写真はこちらの書籍から取っています。
- 参考書籍
The GOVERNMENT MODELS by William H.D. Goddard
けっこうお高いので右のように汚い物しか買えなかった。内容はたいしたことは無い・・よう。
1911A1 については何も記述なしです。eBay で送料込みで2万円くらい。
井浦先生
井浦先生のブログの以下のページには、JBシャノンの特別彫刻版のことが書かれています。 このモデルのオーナーさんは、こだわりがすごいようで、モデルガンのシリアルナンバーも実物同様にしてあります。 またゴールドインレイも再現されていて、まさに特別なモデルガンになっています。- 先生の2016年のページ↓
https://iura.militaryblog.jp/e762848.html
- 先生のホームページはこちら
https://k-iura.com/
井浦先生市販3種
上はすでに無くなっていますが美章園ホビーさんの昔の広告からです。基本的に井浦先生の作品は、ユーザー持ち込みの一品物、特注物ですが、ここに紹介の物は既に彫られたものが市販された例です。 マッコイさんから発売されたのか、エランさん発売なのかは知りませんが、おそらく生産数もわずかだったのでしょう。この3種はJB シャノンと違ってスライド先端下部に彫刻がありません。
なお、上の写真から見ますとこの頃の消費税は5%ですね、写真はいずれもオークションから勝手に取ったものなので クレームが来たら消しますので、資料としてほしい人は保存しておいてください。メ カ
メカ的には、普通の装填式モデルです。各刻印も見えない所にまでしっかりと入っています。 モデルガンは、元が軍用モデルですのでその刻印になっています。
-
スライド先端には保護用のセロテープのようなものが巻いていましたので、今回スライドをバラしたのは、このモデルガンが彫刻後、発売されてから初めてだったのかもしれません。ありがたや、ありがたや。
ここからは実銃の話
シャノン社の紹介
1873年の大工道具のシャノン社のカタログです。ほかに建築金物も取り扱っていたようです。 同年は日本では明治6年に当たり、この年に岩倉使節団が帰国します。まだ日本は夜明け前、ちょんまげの時代だったのでしょう。このカタログは米国オークションで入手したものですが、調べているうちに下記に電子書籍があってすべてが見られるようになっていました。買って損しました・・・。- シャノン社の大工道具カタログの電子本、無料で見られます
https://archive.org/details/JBShannonIllustratedCatalogueOfCarpentersTools1873
ゴフさん作品
こちらJB シャノンによく似た作品です。URL ↓https://www.rockislandauction.com/detail/62/1599/colt-government-pistol-45-acp
この製品もJB シャノン社へ出荷されています。えっ?シャノンさんって何丁も高価な銃を買っているんですか?てことは無くって ここからは私の推測ですが、シャノン社はお客さんに頼まれて注文しているだけだと思います。お客さんは、ほぼ自分のためではなくって 銃に刻まれたイニシャルの人への贈り物にしたものだと思います。調べてみるとシャノン社だけではなくってグリーン出荷(最終仕上げ前の銃)は商社によく出荷されている事が分かります。
シリアルC93183 について
実銃のいわゆるJB シャノンのモデルのシリアルC93183 についての記述が上記にあります。 それによるとFHC の金のインレイが施されていると書かれていますが、探しましたがネット上にはその写真はありませんでした。
しかし、なんと灯台下暗しで、むかし買ったムック本にあるではありませんか、驚きました。FHCのインレイが見られます。
上記のWEB に書いてあるのですが JBシャノン社への出荷は、ムルタ・アップルトン社からのリクエストであるとのことです。 ムルタ・アップルトン社って何でしょうか?調べてみるとやはり商社で警察への拳銃納入なんかやっています。 シャノン社に似た感じのハードウエア会社のようです。以下に資料2点。
したがってシリアルC93183 を JB シャノンと呼ぶには、すこし合わないようです。
では、なんと呼べばいいのでしょうか? FHC さんが有名人ならば、ゲーリング・ルガーやパットンSAA などと同様に呼んでいいのでしょうが、どんな人物なのか分かりません。
したがってゴフさん彫刻モデルと呼ぶのが良いのではないでしょうか?と、いうことはエランのモデルは、ゴフさん彫刻モデルを 緻密に再現したモデルガンと呼びましょうか??ややこしいからJB シャノンで良いか・・・。
- ムルタ・アップルトン社の情報はこちらのフォーラムからです
https://www.coltforum.com/threads/the-colts-of-murta-appleton-and-company-philadelphia-pa.109592/
ゴフさんのグリップ
完全に余談なのですが、ゴフさんのカミナリ模様のグリップは、ゴフさんデザインと認識されているようで、ここに掲載の ゴフさんモデルは同じ物なのですが、2023年オークションには普通のグリップで登場していますが、同じ銃が2024年の オークションではカミナリグリップに変えられています。その方が高くなりそうですね。
- 2023年のオークション
https://auctions.morphyauctions.com/lot-574068.aspx
- 2024年のオークション
https://www.rockislandauction.com/detail/4091/335/william-h-gough-master-engraved-colt-government-model-pistol
参考書籍
すでに売ってしまったので正確ではないのですが、RLウィルソンさんの写真集でコルト・アメリカン・レジェンド という本からのスキャンだと思います。シャノンのカラー写真ありです(1枚だけです)。-
横長の本です。
COLT AN AMERICAN LEGEND by R.L.WILSON
参考WEB
下記ページの解説にあるようにゴールドインレイは、人への贈り物に使用されたものでしょう。 中には大統領への贈呈なんてのもあったようです。イニシャル入りの銃は、注文した人にとっての大切な人へ、もしくは営業の一環としてお客様への贈答品として活用されたようです。-
ゴフさんのゴールドインレイ↓
https://www.rockislandauction.com/detail/75/2461/gough-engraved-colt-government-model-pistol
↑これはゴフさんの作品ではありません。
- 彫刻モデルが贈答用だった記事
https://athlonoutdoors.com/article/colt-model-1911-engraving/
おわりに
初めて手にした井浦先生の作品でした。すごく緻密で日本画のような美しさを感じます。元のゴフさんのデザインを生かしていますが井浦オリジナルと言ってもいいくらいに昇華されています。素晴らしい作品なのですが、そのうちに手放すことになるでしょう。先生すみません。なんたって女房に「私に何かあったら全部捨てる」と言われていますので、そのうちにふさわしい持ち主の元へ送り出したいと思います。
さいきんGun 仲間が認知症になり、家族からコレクション処分の相談を受け、引き取りに行ってきました。 体は元気なのに認知になると大変です。まったく他人ごとではありません。「物が主人を選ぶ」と言うことを 信じる私は、きっと我が手元の子たちもふさわしい場所にたどり着けるものだと思っています。それまでは私がコネコネして可愛がってあげましょう。