ナゾのPPK を追え!

MGC PPK-2 のコピーたち・金属モデルガン
写真00

これは、MGC のカタログに載っていたPPK-2 型のイラストです。
格好いいですね。当時は独自販売を行っていなかったMGC は、1965年にブローニングのモデルガン発売に際し、犯罪に使用されることによる業界絶滅の危機を感じ、住民票の提出による販売を義務付けました。そうでないと出荷しないと言う強硬姿勢に各販売店側は、猛烈に反発し、主張を変えないMGC と決裂してしまいました。ここに「MGC 対その他企業連合」という図式が成り立ち、みんなで 「入荷できないMGC 製品」のコピーを堂々と製作販売するようになりました。

その結果、ブローニングや チーフ、PPK-1 、PPK-2 などそっくり品が市場に広く出回りました。
独自販売店でしか売っていない MGC に対し、その他各社は全国おもちゃ屋の販売網だったので、数はMGC よりもコピー品の方が多く出回りました。


写真01

ということで、今回の主役のマルゴーさんとスズキさんです。
ともにMGC-2 型の丸ごとコピー品です。
MGC PPK-2 は、大変少ないようでWEB 上でも一度しか見かけていません。

オークションでよく製造会社不明のPPK-2 型が出品されますが、どこか明確に 製造所を見分ける方法が無い物かと思っていましたが、今回この2個を並べていて 決定的な識別点を見つけました。それはのちほど述べます。


写真02

とりあえず、外観チェックです。

左のマルゴーのリアサイトは、PPK 戦中型ですが、右の戦後タイプのリアサイトも 製造しています。本家MGC のPPK-2 型は写真右のスズキ製のように戦後タイプでした。


右側刻印

写真03

マルゴーのチャンバー刻印です。M30750 とあります。
MGC PPK-2 は、ここにMGC と刻印されています。


写真04

スズキの物はチャンバーあたりに製造年の刻印があります。
スズキはマルシンの下請けだったようで、販売元のマルシンの刻印が打っていますが、鈴木製作所自身でもこのままPBSS (プロダクト・バイ・スズキ)の箱に入れても販売しています。
むかしナカタ刻印のままマルシンがハイパワーを売っていたのと同じですね。


左側刻印

写真07

同じ字体で同じ文句なので同じところで作ったようにも見えます。
マルゴーは丸郷商店といっていたように、もともと商社なので製造は案外スズキだったりするのかもしれません??


MGC 2型・刻印

MGC 2型図

ちなみに、これがMGC-2 型の刻印です。WEB ページにあった写真を写しました。 Cal ではなくKal と書かれています。また、7.65m/m との刻印があります。マルゴーとスズキには、 ありません。こうた 様、情報有難うございます。(文字は実際よりも大きく書いています)

MGC 2型右側面


メカを見る

写真05

MGC-1 型のメカとほぼ同じ構造ですが、少しの進歩が見られます。
MGC の2型を実際に見たことはありませんが、この二つは、MGC-2 型のフルコピーではないかと思います。


写真06

マガジンキャッチ形状が少し違います。左がマルゴーです。
この形式は、グリップで押さえているのであまり強いバネが使用できないため マガジンが抜けやすいです。それを改良するためMGC-3 型では逆向きマガジンキャッチに変更されました。


写真08

スライドは、そっくりですが、よーく見ると微妙に違います。金型の湯口も少し違います。


写真09

スライドを交換してみましたが、お互いに互換があります。マルゴーのフレーム先端は、スズキよりも少し長いようです。


外観による識別点

写真14

外観から見分けるのは、スライド先端カーブのエッジが立っているものがスズキです。
マガジンキャッチが田の字になっているのがスズキです。
マガジンボトムが長く突き出ている方がスズキです 。でも、そんなのカンケーネーと言える決定的違いがありました。


金型湯口

金型の図

私は、金型を見たこともありませんし鋳造現場に行ったこともありませんが、理屈は、このイラストのような物でしょう。金型には、どろどろに解けた亜鉛を流し込む穴と空気が出て行く穴の最低2箇所は穴が存在しています。流し込むところを湯口と言います。流し込む溶けた金属を「湯」と言います。実際は、機械で圧力をかけて注入したり物によっては真空にしたりするようです。 金型は、通常二つをあわせた物なので、製品の真ん中にパーティングラインが出来てしまいます。また、湯口の形状も残ります。イラストの赤丸です。その湯口の位置に違いがあるので各社の金型を識別できます。


各社違い図

自分が調べた限りでは、PPK-2 型は、このように湯口の位置が違います。
この丸を見れば、ひと目でマルゴーなのかスズキなのかが判別できます。
● 追 記
マルゴーには、MGC と同じ位置に湯口のあるフレームもあることが判りました。


押し出しピンの跡でした

複数の方から教えていただきました。有難うございます。
あの円形の跡は、金型から製品を押し出すピンの跡だと判りました。エジェクターピンとも言い、製品を押し出すためのピンが差し込まれていて、そこに湯を流し込みますので、跡が残ります。湯口は整形跡が必ず残りますので完成後は見えないところに設けられています。

鋳込んだあとは製品が、どちらかの金型にくっついて取れませんのでピンで叩き出します。金型の どちらにくっつくか、とか取り出すための勾配とか、全部計算されて金型は作られているそうです。


PPK写真

では、例題です。これはスライド左右にまったく刻印が無いPPK-2 型ですが、 どこ製でしょうか?もうお分かりのようにスズキ製ですね。トリガーガードの付け根にくっきりと 湯口の丸が見られます。PPK-2 型の鑑定士合格です。


Gun 誌に見るマルゴー・リアサイト

写真11

これは、Gun誌 1978年(昭和53年)7月号のマルゴーの広告ですが、リアサイトは、戦後タイプです。


写真12

こちらは、翌年の1979年4月号の広告です。リアサイトが戦中タイプです。一体どちらが先に販売されたのでしょうか?戦後タイプスライドに戦中タイプのリアサイトは、間違った組み合わせですので、こちらの方が販売は先ではないかと思っていましたが、広告では逆ですね。

マルゴーPPK の箱の絵は戦中リアサイトなので、販売はそちらが先ではないかと思っています。
この写真のフレームの湯口は、MGC と同じ場所にあります。


幻のMGC PPK-2。カタログより

写真13

MGC のカタログの写真です。セフティ逆作用のPPK-1 型を戦後スライドタイプ、正常セフティに変更して販売された物です。今回実物は登場していませんが、このページの主役であることは間違いありません。


写真10

MGC は、そうとうPPK に、こだわりがあったようで、やがて実銃サイズの3型を発売します(右端)。
もう、そのころはモデルガン界も独自の製品を開発していて3型のコピーが出現することはありませんでした。


本家、コピー品一覧

MGC 1型

1964年

MGC セフティ逆作動 スライドはカット、サイト共に戦中型
マルゴー セフティ逆作動
ハドソン セフティ逆作動
全長1cm長い
MGC 2型

1967年

MGC スライド戦後型 ハドソンにも戦後スライドタイプが存在した?
(書籍写真にあり)
マルゴー1 リアサイト戦中型
マルゴー2 リアサイト戦後型
スズキ スライド戦後型
マルシン スズキと同一物


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