MGC は後期には様々な刻印カスタムを販売していたようです。どれも少数だったようで、箱もカスタム仕様専用の箱を作って、 それにカスタムした写真を貼りつけて販売したようです。ネットオークションでも稀にしか出てこないので見かけるたびに、ついついポチってしまうことも多いです。
中身は右のようで刻印は自分でホワイトを入れました。付属品の箱にはリアルサイズ発火用カートが入っていました。
マーク3?
このカスタムは、マーク3ということですが、ハードウエア的にはGM 12 の刻印カスタムです。 落札後、どのような説明書きが入っているのか楽しみに待っていましたが、残念なことにマーク3の説明チラシは入っていませんでした。
調べてみましたら、実銃でのこのマーキングは一般的に プレ 70 と呼ばれるもので、有名なマーク4・シリーズ70の 少し前に作られたものです。 マーク4のひとつ前だからマーク3で良いのか?というとそうでもなく、コルト1911のバレルには、れっきとした マーク3が存在していたのでした。3があるということは、そうマーク2もあります。さすがにマーク・ワン刻印は無いのですが それに相当するファーストモデルは存在します。
38スペシャル用ガバ
こちら、実銃の写真ですが、かなりレアな38スペシャル・ワッドカッター弾使用のナショナルマッチ・ミドルレンジです。ストレートブローバックでマガジンには、38スペシャルが5発入ります。38スペシャルは、そうリボルバー用の弾なので ワッドカッターしか使えません。38口径以上禁止の射撃大会用のガバメントです。
S&W 社のM52
に対抗したものかもしれません(時期はコルトの方が早い?)。
以下是非ご覧ください、素晴らしい解説ページです。バレルのチャンバー刻印にマーク2とマーク3が見られます。 シリーズ70ゴールドカップはこの位置にマーク4の刻印がありますので、そのまま素直にマーク3からの続き番号と捉えていいのではないでしょうか?(自説です)
- 素晴らしい解説その1↓
https://www.coltforum.com/showcase/a-look-back-at-the-colt-gold-cup-national-match-38-special-mid-range-semi-automatic-pistol-part-1.5/
- 解説その2↓
https://www.coltforum.com/showcase/a-look-back-at-the-colt-gold-cup-national-match-38-special-mid-range-semi-automatic-pistol-part-2.6/
- 参考:エランのマーク4刻印
プレ70
と、いうことでこのMGC モデルは、プレ70モデルということで見てみましょう。 シリアルは、残念ながら実銃の書籍の範囲を少し外れています。この辺の詰めの甘さがいかにもMGC らしくって 好きなところでもあります。おっしいなぁ・・・と、こちらの方が勝ち誇ったような感じを抱かせてくれます。 と、いってもこっちも単に書籍を参考にしているだけなので、それほど知識があるわけでも偉いわけでもありません。 ひょっとしたらMGC は実在のシリアルから取ったものかもしれません。
私の参考にした書籍には、1956年からイタリックの袋文字刻印となり、おおむねシリアル273000-C あたりだそうですが、ネットで
それ以前の 272334-C というのは見つけました。MGC のシリアルはもっと古くて270550 C です。
調べてみましたら1955年製 のようです。
- 272334-C のURL は、こちら
https://www.collectorsfirearms.com/products/84287-colt-government-model-pre-70-series-45-acp-caliber-pistol-made-1955-with-box-c2050.html
プレ70実銃写真
実銃のお話ですが、プレ70には普通のタイプとナショナル・マッチタイプとBB タイプとの3種類があります。 普通のプレ70は会社の持ち主が変わり社名が昔ながらのコルト・パテント・ファイア・アームズに戻ったので ロゴもイタリックにして格好良くしたものです。ナショナルマッチは、トリガー幅も広くなった競技用銃で外観だけは、ほぼシリーズ70・ゴールドカップと変わりません。それに対してBB シリーズは、中身のメカに大幅に改良が加えられていて、 コレット式のブッシングとそれに合ったバレルに変更されたものです。そう、それこそマーク4シリーズ70の プロトタイプなのでした。バレルとフレームシリアルにBB 刻印が入っています。
また、この頃のコルトのプラ製グリップは、品質に問題があり経年で収縮してしまうものでした。したがって オリジナルグリップの写真をようく目を凝らして見るとネジ穴あたりでグリップが縮んでいることが分かります。 上の写真がまさにその状態です。ナショナルマッチは、プラではなくメダリオン入りの木製グリップでした。
- 上の写真は、こちらからです↓
https://www.oldcolt.com/collections/colt-post-war-government-model/products/colt-government-model-45acp-sn-322203-c-mfg-1968
- 大変参考になります、たかひろさんの日本語ページ
プレ70ナショナルマッチhttp://taka25ban.blog.fc2.com/blog-entry-191.html
- pre70 BB Serie
イタリア語のページhttps://collectorsmallarms.com/prodotto/colt-government-pre-70-bb-serie/
コルト社買収の話
第2次大戦終結ののち経営に喘いでいたコルト社は何度かオーナーが変わったようですが、1955年にはPenn-Texas 社に買収されました。それを機に昔の会社名であるコルト・パテント・ファイア・アームスに戻したのでスライド刻印も斜体にして格好良くなりました。ちなみにその前の社名は1947年にコルト・マニュファクチャリング・カンパニーに変更されていました。- コルトの歴史
ヒストリカル・ノートを展開すると読めるhttps://cslarchives.ctstatelibrary.org/repositories/2/resources/623
- 上記から飛んでコルト家のコレクション
珍しい写真たくさん、日本の火縄銃もあります。https://www.thewadsworth.org/explore/collection/colt-firearms/
MGC・メカ
メカ的には、普通のGM-12 リアルカート仕様です。バレルにフィードランプが付いたやつです。 チャンバー刻印は何もありません。グリップ交換
上の方の実物写真にあったように、本物のプレ70のコマーシャル版には馬マークの付いたプラスチック製グリップが装着されていました。 ちょうどMGC にはそのマーキングの黒色グリップが存在していて、それを塗り替えたものをオークションにて入手しました。 そのうちもう少し実物っぽい色に塗り替えようと思いますが、今はこの形が完成形です。これぞ、MGC プレ70 コマーシャルの姿です。なかなか良いんじゃぁない?プレ70 刻印は、昔のCMC でも採用されていました。袋文字がなかなか格好いいですね。
実銃でもこのあとシリーズ70の間じゅう
使用された模様です。
ガバ・コレクション
ガバメントは、たいへん長い間造られ、軍用、民間、射撃用 など様々な状況に応じたバリエーションが存在してすべてを集めるのは 不可能でしょう。また、特許が切れたのでコルト社以外のクローンも多数存在しています。 私は、こんなに長く愛されているのは、トリガーがシンプルに直線的にシアを押すことによる操作感覚の良さが原因なのではないかと思っています。ワルサーP38 やベレッタ92などは片側にトリガーバーがあり、力のかかり具合が均等ではありません。また、トリガーを後方へ直線的に引く指に対してトリガーは上方へ回転運動を行います。これってあまりいい感触ではありません。 対してガバは、力のかかり具合が人間工学的に心地良いのではないかと私は思っています。まぁ、そんな想像はどうでも良いとして、とりあえずゴールがないコレクションのためにバリエーションを列記してみたいと思います。 トイガン再現については知らない部分も多いので知っている方がいましたら助言いただけるとありがたいです。
軍用タイプ
背景が黄色の行は、コルト社以外の製造です。
年代 | タイプ | 特 徴 | トイガンモデル化 |
---|---|---|---|
1912 | 初期型 | サークルランパント刻印 | 六研 、 ジーク 、 MGC |
1912 | 初期型 | イギリス向け、1915年から455口径 | 新橋鉄砲玩具 、 エラン 、 WA |
1914 | 初期型 | サークル無し刻印 | リアルマッコイ |
1914 | 初期型他社製 | スプリングフィールド工廠 | リアルマッコイ 、 エラン 、 WA |
1914 | 初期型 | カナダ向け | |
1914 | 初期型 | アルゼンチン向け、A1も有 | MGC、CAW、WA |
1915 | 初期型 | ノルウェー向け | エラン、WA |
1915 | 初期型 | フランス向け | |
1916 | 初期型 | ロシア向け | |
1917 | 初期型 | オランダ向け | |
1917 | 初期型 | フィリッピン向け | |
1918 | 初期型 | 刻印変更・馬印が真ん中 | エラン |
1918 | 初期型他社製 | レミントンUMC社 | エラン 、 MGC、WA |
1918 | 初期型他社製 | A.J.サベージ社? | |
1918 | 初期型他社製 | ノースアメリカン社 | |
1918 | 初期型他社製 | ウインチェスター社プロトタイプ | エラン |
1921 | 初期型 | ブラジル向け、A1 もあり | |
1922 | 初期型 | メキシコ向け | |
1924 | A1型 | トランジション型 | MGC 、 WA |
以降A1型 | |||
1937 | A1型 | A1ミリタリー型 | 各社 |
1941 | A1型 | レンドリース・イギリス向け レミントンランド製、 イサカ製 もあり | |
1941 | 他社製 | シンガー社 | ?? |
1942 | A1型 | コマーシャル・ミリタリー | ホビーフィックス |
1943 | 他社製 | レミントンランド社 | CAW |
1943 | 他社製 | US &S ユニオン・スイッチ&シグナル社 | ?? |
1943 | 他社製 | イサカ社 | ?? |
1943 | A1型 | レンドリース・カナダ向け | |
1955 | Springfield 製 Rock Island 製 | キャンプ・ペリー向け競技銃 | ?? |
他にも1924年から42年にかけて少数がコロンビア、キューバ、エジプト、香港、中国などへ輸出されています。
コマーシャルタイプ
以下は書籍から拾ったもので年代や内容にやや??なところもあります。
年代 | タイプ | 特 徴 | トイガンモデル化 |
---|---|---|---|
1912 | 初期型 | サークルランパント刻印 | |
1914 | 初期型 | サークル無し刻印 | |
1918 | 初期型 | 馬印が真ん中 | |
1920 | 初期型 | スライドマーク変更、馬印は右側へ | |
1932 | A1型・45口径 | ナショナルマッチ登場 | ホビーフィックス |
1934 | A1型・38スーパー競技 | スーパーマッチ登場 | |
1936 | A1型・22LR 口径 | エースモデル登場 | |
1937 | A1型・38スーパー | スウォーツセフティ装備 | |
1947 | A1型 | 左側刻印の社名変更 (馬は右側) | |
1949 | A1型 | 馬印が左側へ戻る | |
1956 | A1型プレ70 | コルト文字が斜体になる (会社買収) |
MGC |
1957 | A1型・ナショナルマッチ | ゴールドカップ登場 (カップ刻印はまだ) |
CMC |
1958 | 38AMU口径 | 38スペシャルのリム改造競技用 | |
1960 | 38SPL口径 | 38スペシャル・競技用 | |
1970 | A1型プレ70 | BB 刻印 | ホビーフィックス |
1970 | A1型・シリーズ70 | マーク4・シリーズ70 | エラン 、ホビーフィックス 、他多数 |
このあとシリーズ80や90になると思うのですが、なんたって参考にした書籍がシリーズ70までしか書いていないので ここで止めにします。
参考・口径別
年代 | タイプ | 特 徴 | トイガンモデル化 |
---|---|---|---|
1912 | 45口径 | 軍用 | 各社 |
1916 | 455ウエブリー オート | イギリス向け | 新橋模型、エラン、WA |
1934 | 38スーパー | 競技用 | エラン、MGC |
1936 | 22LR | バレル、スライドキットもあり | |
1949 | 9mmパラ | 9mmLUGER 刻印、9連発 | エラン |
1958 | 38AMU | 38スペシャルのリム改造競技用 | |
1960 | 38SPL | 38スペシャル・競技用 |
参考書籍
あいかわらず私にとってのバイブルたちです。両サイドは軍用のみ記載、真ん中はコマーシャルと輸出用が記載されています。
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左は有名なバイブル3部作の一つ、5万くらい?増刷しないのでプレミア価格。
Collector's Guide to Colt .45 Service Pistols: Models of 1911 and 1911A1
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中も有名なバイブル3部作の一つ、プレミア価格・・・高い。
Colt .45 Government Models ( Commercial Series )
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右はいつも参考にさせてもらっています。35ドルくらい?
U.S. PISTOLS & REVOLVERS 1909-1945
おわりに
かつて私は、刻印違いの収集には否定的な人でした。ですが歳をとったせいなのか、最近は刻印違いに喜びを見出してしまいます。 何故なら、それぞれの刻印にはそれなりの意味が潜んでいて、それを解明することでその時々の歴史がよみがえってくるのを ワクワクと感じるからです。しかし、同じようなものをたくさんコレクションすることになり、他の人からは相当に冷めた目線を浴びることになりますね。 まぁ、そこそこに自分をおだてながら集めることにしましょう。