写真00
夢のようなモデルが、発売されました。かつて日本陸軍が採用していた94式拳銃です。
姿かたちは、よく目にしていましたが実際にどうなっているのか、よく判らないマボロシでした。
 
かつて六研からアルミ文鎮で発売され、それを購入して出来の悪さに驚きました(1973年ごろ)。
鋳造具合にバラツキがあり、ちゃんとした製品もありましたが、私が購入したものは左右の砂型にズレがある 最悪品でした。それでも、幻の94式拳銃を触れた喜びは感じていました。

写真01
時は流れ、2006年頃ふたたび六研からプラスチック製の無可動モデルガンが発売されました。
そちらは、外観は素晴らしい出来栄えでしたが、やはり動かないものでした。
写真02
それがこのたび、歴史的製品を意欲的に繰り出しているハートフォードから発売されました。
ちゃんとうごく94年式です。
 
動いているビートルズを初めて見た以来の感動です。
軽いプラスチックだろうが、簡単に許せちゃいます。なんたって動くのですから。
写真03
くー、泣かせる箱のデザインですね。ハートフォードさんは、マニアの心がわかっていらっしゃる。
しかもお買い得感のあるお値段です。

写真04
説明書もしっかりと戦時中を彷彿させる作りになっています。
 
復刻版の取扱書まで入っています。ハートフォードさんに感謝っ!生きててよかった。

外 観

写真05
重さが軽いのはしかたがありません、ヘビー素材ではありません。約400gです。
重さを稼ぐために、グリップは金属製になっています。

写真06
14年式拳銃が大きくてかさばることから陸軍に要請されて南部きじろう氏が開発したそうです。
並べて見ると同じ弾薬を使用するにもかかわらず、大きさ軽減は達成されています。

写真15
パーティングラインは、残っています。手のかけどころを残してくれているのかも?

写真07
これこれ、ショートリコイルでちゃんとロッキングブロックが下降します。
重力で下がるのではなく、バレルで押し落とされるので銃を逆さまにしても下降します。
 
ちゃんとメカが再現されているのがありがたいです。

写真08
ロッキングブロック部とフレーム後端は、インナーで別部品になっています。
良く考えられています。この部分は、実銃でも別パーツで、あとからアリミゾ結合されてカシメられています。 南部氏設計の銃は、みんなフレームが奇々怪々です。また、実銃ではコッキングピースは、あと溶接だそうです。
 
こちらのカナダの南部研究家テリーさんのページでアリミゾ・カシメが、よく解ります。
http://members.shaw.ca/tju/t94193pix.htm

メカニズム

写真09
すばらしいっ!ぜーんぶ再現されています。変なシアー機構もちゃんと。
しかし、組み立てにくい銃ですね。このあたりは、そうとう軍の介入で当初設計が メチャメチャにされたものではないかと思っています。
 
当初の試作品は、このような形でした。グリップが変なのはバナナ弾倉で前に向かってカーブしているからです。
それよりも注目は、この試作品はごく普通のミゾでスライドが組まれていることです。
実際に製品化されたものは、へんなブリッジとスライド先端下部のかみ合わせで構成されています。
この邪魔なフレーム後方のブリッジは、軍の外観要求から出たものだと私は思っています。
浜田氏が開発した2式拳銃がプロトから製品に至る過程を見ていると軍が形の変更を迫ったことが よく判ります。機能を無視して形を優先させるなんてことは、商業製品ではあるまいに、軍用武器開発では あってはならないことだと思います。

2式拳銃については、頑住吉 さんのこちらのページが最高です。
http://homepage3.nifty.com/gun45/2siki%20jitujyuu.htm

デンジャラス・ゾーン

写真10
セフティをバラすときには、十分な注意が必要です。ごく小さいボールが入っています。
左の写真状態から上にセフティバーを動かすとボールはどこかへ飛んでいってしまいます。
絶対に下へしか回してはいけません。 すごく小さなボールです。
 
実銃の分解図には載っていませんので、本物はどうなっていたのでしょうか?
94式拳銃のセフティは効かないことも多いそうなので、テンションは掛かっていなかったのかもしれません。

追記・情報感謝

図20

匿名様より解説いただきました。有難うございました。謎が解けました。
 
イラストのように、セフティ本体は板バネのようになっています。
それでテンションがかかっていました。
ですからノッチのところには、何も出入り機構は存在していません。
後期の94式のセフティが効かないのは セフティの軸がフレーム貫通型ではなく、短いため、粗悪製造による軸のガタツキに由来すると思われます。 こんなこともHWS モデルガンのおかげで考察できますね。

ガンコジジイ?

写真12
私は、94式は南部麒次郎氏ではなく部下の若い人が未熟な技量で設計したものかと思っていましたが、 このトリガーバーを見て意見を改めました。これはカムでトリガーからのチカラを90度変えています。
 
この機構は、ルガーP-08 と同じ考え方です。こんなふうに設計する人っていうのは、ルガーを参考に南部式拳銃を 作ったであろう南部麒次郎氏しかありえません。

写真13
ルガーの構造によく似ています。しかしカムでシアバーがズルッと横に移動することは、けっして 引き心地がいいとは思えませんね。ハンマーのかかりが外れる摩擦感なんか消し飛んじゃいそうです。
 
発火がストライカー式ではなくハンマー式になったのは、おそらく当時の14年式拳銃の撃針トラブルのせいでしょう。 14年式は、撃針の細い部分が長くてすぐ折れることがよく知られています。また、少し曲がっただけでも 発火不良になる可能性が大きいです。ですから14年式のホルスターには、予備の撃針入れが付いていました。
14年式は3度ほど撃針構造がマイナーチェンジされましたが、それで解決されたのかよく知りません。
写真14
もうひとつルガーへのこだわりが見られるのが、グリップの止め方です。
 
才能の限界なのか、ルガーへの憧れなのか、何れにしても南部氏は頑固だったと思います。

カート

写真17
カートも良く出来ていて、左に置いてある実物ダミーと見間違えそうです。
弾頭はネジで外れますので写真撮影に重宝します。

ストローフィニッシュ

写真16
書籍写真のように初期の頃の仕上げの良い製品は、トリガーなどがストローフィニッシュでした。
 
HWS モデルも良く出来ていますが、外観をいじるならパーティングラインを消し、トリガーバーを フレームと水平にし、押し出しピン跡を削り、インナーフレームとの境目にパテを入れカシメピンの跡をつけると 最高の一品に仕上がるのではないでしょうか?
 
えっ?わたし?私はそんな細かいことは、気にしません。どノーマルで結構です。

参考書籍ほか

写真18
この本は旧日本軍の拳銃の最高の参考書です。94式のプロト写真も多く載っています。
結構なお値段ですが、絶対におすすめします。
 
また、インターネットでは下記のページは必見です。

おわりに

写真19
世の中、金属モデルガンが絶滅してガスガンばかりになっちゃいましたが、こんなに良いモデルガンが 発売されるなんて、捨てたものではありません。
むかしのモデルガンオヤジは、弾も出ないモデルガンをいじっては、昭和初期の軍国日本から六研キャストまで思いを馳せています。やっぱ、メカを再現したモデルガンは、いいもんだ。
 
趣味にも気兼ねしなくてはいけない世の中ですが、これは弄るだけで楽しめます。
これぞ、オヤジの生きる道 だなぁと納得する製品でした。
さぁ、プラスチックは嫌だとか言ってるそこのオヤジ、キャストモデルを知っている団塊軍団の先輩、 今からこぞって買いに行きましょう。胸張ってお勧めします。

撮影に使用したホルスターはドイツのものです。94式のホルスターは牛革、豚革の物が米国オークションに 度々出品され、250〜350ドルくらいですが、競争が厳しくてなかなか落とせません。

オマケムービー

組み立てるときにリコイルSPを噛み込ませてしまった悪い例です。
 

分解図

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