8mmレベル・ライフル弾

世界初の軍用無煙火薬弾


銃器先進国フランス

1860年〜90年にかけてフランスは銃器先進国だった。 歴史に残る発明や製品が続々と出現する。

1866年 ドイツで出現したドライゼ銃に対抗してシャスポー11mm単発銃が現れた。 ドライゼを参考にしたと思うが、出現の速さからいって似たような物が すでに開発されていたのかもしれない。

shassepot

1874年Gras大尉によって金属薬莢を用いるセンターファイアー式黒色火薬弾を 使用するグラー・ライフル単発式が登場。

gras

1886年Nicolas Lebel氏他の開発による世界初の無煙火薬を用いた 8mmレベル弾を使用するレベル・ライフル登場。 チューブマガジン式で8連発。燃焼の早い無煙火薬は弾頭の初速が得られやすく 口径は小さくなり、世は無煙火薬の時代を迎える。

Lebel

今回紹介する3発クリップ付の弾は、レベルライフルの後に出てきた MLE 1890ライフル用である。レベルライフルは画期的な製品だったようだが チューブ式マガジンへの装填が難しくオーストリアでマンリカ式弾倉が 発明されたため、誰でも簡単に弾を込められるこの方式により 新たにライフルが設計された。機関部はグラーの頃からあまり変わってはいない。 開発者の名を取ってBerthier ライフルとも呼ばれる。


それぞれの使用弾薬。

↑シャスポーの紙包み式弾薬。

←左からグラーに使用された
11mm 黒色火薬使用実包、および
レベル・ライフル用8mmレベル弾(無煙火薬)。


8mmレベル弾は11mmのグラー弾に比べるとずいぶんとスリムになっているが、 それでも隣に置いた30-06弾と比較するとずいぶんとずんぐりむっくりである。 2弾絞りのケース形状からミルクビンと呼ばれた。

チューブ式弾倉のレベルライフルに使用されている頃は、弾頭先端は平らであった。
とがっていたらセンターファイアーだから前の弾を発火させる恐れがあり、危ない。

ボディー径が大きくリムド形式のレベル弾はライフルには、たくさん入れられないし 機関銃などは大きなリムのため設計しにくく1934年には、リムレスの7.5mmx54 弾に 変更されている。



Berthier Rifle 1890

チューブ式レベル・ライフルの後継として登場したマンリカ式弾倉を持つberthier ライフル1890。 図はカービンタイプである。以下に詳しいページがたくさんある。

(フランス語?)http://armesfrancaises.free.fr/mousq%20Mle%201892.html

(英語)http://www.gunsworld.com/french/bert_leb/bert_us.html

(英語)http://www.angelfire.com/vt/milsurp/berthier16.html


同ライフルは当初3連発であった。8mmレベル弾の径が大きくてそれ以上銃に入れられなかった。

マンリカ式弾倉なのでクリップにカートを装着して銃に入れ込む。1914年サラエボ事件をきっかけに 始まった第一次世界大戦にフランスも参戦。戦場で他国のライフルが5連発である事を知り1916年、 戦争中にもかかわらずあわてて5連発に改良したモデル1916ライフルを制式化した。

単にクリップを大きくしライフルの弾倉部分を下に伸ばしただけであったが、クリップは マンリカ式弾倉の特徴ゆえ互換性がなく、戦場では困ったと思われる。

また、クリップが落ちてくる機関部下の穴をふさぐフタが取り付けられた。 戦場での砂の侵入を防いだ。
(右図はフタ開き状態) マンリカ式弾倉は時代遅れとなりつつあった。

この断面図はそうとういい加減に描いているのであまり見つめてはいけない。 ただ、上のライフルの絵でトリガーガードにクリップキャッチが覗いているのを 描き忘れていたために、ここで補完しておく。断面図はボルトが2分割されている という事がいいたかっただけです。

ヘッドスタンプ



写真とイラストは同じ並びである。右の2発は同じ刻印だ。 全てにあるART というのはDireccion de Artilleria らしいが意味がわからない。 想像するに陸軍用なんて書いてあるのでは?ART.D のDは先端のとがったD型弾の意味。 昔のチューブマガジン用は平らなM型で刻印もMと書いてある。

下の段は想像だが、製造所を表していると思う。
ARS とはAtelier de Constuction de Rennes, Rennes, France
ECP とはEcole Centrale de Pyrotechnie, de Bourges

真ん中の数字の右側が製造年を表す。右の2つの弾は一時大戦の始まった1914年製で 左の物は、なんと1905年製だ。 2006年正月にこのページを書いているので101年前の物だ。


弾頭にも刻印

8mmレベル弾D型弾頭は英語で言うとソリッドブロンズ。私は銅の無垢ではないかと思う。 凝った事に弾頭下部にも刻印が見られる。
ARS 社製造1913年製といった感じか?
昔は一発一発が大切だったのかもしれない。時代を感じさせる。

脱線するが現在ハンティングでの鉛の環境汚染を 防ぐため銅の無垢による弾頭の使用が推奨されている。当然ゲームに対する弾頭変形が少なくなり 威力は落ちると思われるが、詳しくは知らない。


100年前の兵士に「100年後の地球では戦争もなく、みな平和に暮らしていますよ」と、言えない現実が つらい。


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