洋酒天国 No.43

昭和 35年2月発行(1960年)・サントリー・小冊子

五六式 様より貴重なコレクションを拝借して書いています。有り難うございました。


写真00

今のサントリーが壽屋と名乗っていた頃の小冊子です。拡販用のものでしょう。サントリーは昔から イメージ戦略に長けていました。これが、まぼろしの「洋酒天国43」です。

いくつかの記事で、この冊子が一大キャップガン・ブームに火を点けたとされるものです。 私は、まだ2歳でまったく知りませんが、1982年5月号のGun 誌に根本氏が記事を書いておられます。

時は、昭和35年、まだ自由に貿易することは禁じられていた時代です。戦後の灰の中から朝鮮戦争景気を経て 立ち直りの兆しが見えてきだした頃で「明日には豊かな未来がある」ことが現実として捉えられ 「流した汗だけ幸福になる」ことを信じてシャカリキに働いた先輩たちがいました。今の若い方の おじいさん世代でしょう。日本の驚異的な経済成長の担い手たちでした。


写真01

まだ公には、たくさんは売られていなかったキャップガンなどの写真が載っています。
どれだけ多くの子供たちが、何度も見たことでしょうか。おそらく売ってもいない憧れの逸品だったと思われます。 今の人が、六研の真鍮モデルを見るのと変わらないと思います。

まだ情報があふれていない社会です。テレビさえ街頭でみんなで見ていた時代です。
拳銃のカラー写真すら 珍しかったのではないでしょうか。

現在の目で見ると、この写真がどうして魅力的なのか判りません。時代が違います。
今では考えられませんが、電話は設置してある他人の家のものを借りていました。


写真02

なんともレアな分解図が載っています。ブラックホークとウッズマン・マッチターゲットです。
どうしてこのようなマイナーな物を載せているのか判りませんが、おそらく選んだ人の好みだったのでしょう。 ブラックホークは最旧型です。ウッズマンはサードシリーズですね。

米国NRA か、ガン・ダイジェストの分解図集を参考に描いていると思います。


写真03

裏表紙には、スナブノーズ・リボルバーが載っています。
当時の拳銃は、正義のヒーローの道具でありました。米国のウエスタン・テレビドラマが放映されだした頃であり、 その後の国産ヒーロー、月光仮面、ハリマオや忍者戦隊月光?などみんな拳銃を持っていました。

この冊子から1年後の昭和 36年の貿易自由化を経て、ウエスタンブームに乗り米国のキャップガンが市場にあふれます。 それを丸ごとコピーや改造して販売したのがMGC や江原商店(のちのCMC )でした。 すこしあとから中田商店は六人部氏を擁し、優れた製品を輩出します。その下請けは丸真工業(マルシン)です。 ホンリュー(ハドソン)は当時から独自路線です。

また、雑誌も銃器を扱った臨時増刊号などを経て拳銃ファン(改名後ガンファン)が創刊されます。 のちのコクサイもトイガン販売に乗り出し、拡販冊子Gun が現在のGun 誌になっていきます。 MGC の神保氏、CMC の江原氏、コクサイの荒井氏など何歳くらいだったのでしょうか?
やがて日本のモデルガン業界を担っていきます。

1964年(昭和39年)先進6ケ国に日本も加わります。今のG7です。
今日でいえば、北京オリンピックで急成長する中国のようなものです。

驚異的な成長を遂げた日本を支えた先輩たちの流した汗をけっして忘れてはいけません。
世界経済から忘れられようとする現在の日本にいる私たちは、偉大な先輩である「老人」たちの遺産を 食い潰して生きている馬鹿息子ようです。



裏表紙に30円と書いてありますね。売っていた物ですね。


雑感
ひとつだけヌード写真が掲載されていますが、そこに登場するモデルさんは、たとえば当時20歳だとしたら、 いまでは68歳ですね。
当時は、はしたないと思われたかもしれませんが、今ではいい思い出なのかもしれませんね。


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