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↑ ステンチーフ本物と並んだINT・センチニアル
 
米国在住のYoshi さんからすごく程度のよいINT センチニアルの写真を頂きました。
つい先日ガンショーで買われたそうです。意外だったのですが、モデルガンもそこそこ出品されるようです。 もちろん黒色、ガス抜けでおもちゃ扱いだそうです。おおむね100ドルくらいで個人出品なので値引きも出来るそうです。
Yoshi さんの実銃 オートマグ中心のページはこちらです。日本語ページも多いです。
 
http://www.biskun.com/hobby/ Yoshi's Hobby Page
 
なお、当ページは黒色ガス抜けを賛美するものではありません。法をきちんと守ってサイバー・パトロール隊に引っかからないように気をつけてください。このページは、40年前にモデルガンがどんな姿でいたかを知って欲しいので記事を書いています。

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1962年ごろに産声を上げたモデルガンたちは、日本の経済成長とともに少年の「強くなりたい」という心を満たしていきました。
 
スタートは中田忠夫 氏による米国キャップガンの輸入販売でした。
それを神保 勉 氏率いるMGC の技術者、小林 太三 氏が改良してモデルガンが誕生しました。

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当時は、毎年給料が上がる高度経済成長の日本です。子供の懐も潤沢になりモデルガンはドンドン売れていきました。 数が増えると質が落ちるのは世の常です。
なかには、犯罪にモデルガンを使う者も現れ出しました。
 
そこでMGC は、自信作ブローニング380 の完成に伴い、住民票提示による販売を提唱します。

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これに猛反発した他社は高級玩具組合を作り、MGC 対 その他会社 という図式でモデルガン業界は真っ二つになりました。 その中でもコクサイは、金型屋と組んで MGC 製品のコピー製品を製造販売し始めます。えげつないですね。
 
そんなことで登場したのが、このINT (インターナショナル・ガンショップ=のちの国際産業)のセンチニアルです。 MGC のコピーもコピー、まったく同じ製品です。他にチーフもコピーしていました。マルゴーなどがPPK やブローニングもコピーしました。

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まるっきしコピーなのですが、MGC のセンチニアルとシリンダーストップの形状が少し違います。
他は、刻印で判別するしかありません。写真はMGC です。

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完成されたメカニズム。MGC の最初のチーフは、まともに動かすのがたいへんでしたが、1965年ブローニングのあとに 登場したセンチニアルはたったの2年でメカは完成領域に達しています。しかも実銃のようにシリンダーセンターを貫くロッドを装備し、 機能的にも本物にグッと近づきました。
 
このコクサイ製もまったく同じメカなので、遊ぶには問題ない機構です。
シリンダーストップを実銃のように薄く製作できないので、トリガーの厚みをそこだけ半分にしてでっかいシリンダーストップの 逃げを作っています。この機構は、その後のMGC 製品にも引き継がれますが、他社の製品にも多く見られることになります。

1965年へタイムスリップ

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いま上海では万国博覧会が開かれていて、見下したような報道が多いので笑っちゃいますが、1970年の日本万国博覧会が開催決定されたのが 1965年です。当時中国では文化大革命が起こっています。ホンダF1が初めて優勝しています。
 
当時のモデルガンを示す写真です。ガンブルー仕上げでガス抜けです。保存状態もいいですね。
今の日本では、こんな写真を載せただけで逮捕の恐れがあります。
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俗に豚バナと呼ばれるガスの抜け穴です。
また、日本初の実銃のようなシリンダーロックシステムが見えます。
 
当時モデルガンは発火して遊ぶことが当たり前の時代でした。 今では、考えられませんね。
少年たちが街中でエアガン撃っただけで新聞沙汰になることでしょう。
このころのハナタレ小僧たちが日本の高度経済成長の歯車をガンガン回して行った団塊世代の先輩たちでした。

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シリンダーインサートがあります。MGC の神保会長は当初から実銃とモデルガンは違って然るべきだとのポリシーがありました。 まだ、モデルガンが犯罪にも使用されていないころから、そうでした。MGC コマンダー発禁処分によってこの発想が確立されたのかはナゾです。
 
CMC の江原 氏は実銃に似せるためにシリンダー前面インサートは設けていないモデルが多かったです。

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ハンドのかかるところは、こんなんですが、ちゃんとこれでも回ります。MGC と同じ構造です。

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当時のカートは何故かリムが薄いものが多くて使っているうちに削れてシリンダー内に落ち込んでしまいました。
 
右のカートは、たぶん38スペシャルの実包です。キャストブレット(鉛?)をしっかり絞り込んでくわえていますので、 ファクトリー製だと思います。
その後聞きましたらウインチェスターのシルバーチップ弾だそうです。護身用に最強でしょう。

外観比較

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ネットで取ってきたオールドなセンテニアルと合成写真を作りました。
 
ハンマー部のカーブが実銃のほうが急ですね。トリガーガード形状の違いがすぐに判ります。

フラットラッチ

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小判のようなラッチのS&W 製品は数がたいへん少なく珍しい物です。当時MGC はどこからの情報で製品を作ったのか知りませんが、 チーフもセンテニアルも小判型です。六人部氏が作ったコクサイのミリタリ・ポリス は空軍基地での取材で小判ラッチになったと思われます。
写真はS&W フォーラムから取ってきた実銃写真です。ラッチの1st、2ndタイプを示しています。たぶん勾配の付いていない方が 初期型でしょうね。すごいコレクションです。
S&W フォーラムはこちら→ http://smith-wessonforum.com/

センテニアル

ハンマレス図 MGC がセンニアルと呼んだため、その名で日本では呼ばれていますが、もともとS&W 社創設100年祭に販売されたモデルなので 100周年を表すcentennial は、センテニアルと呼ぶべきではないでしょうか?YouTube で見たら英語ではセンテンと聞こえますが・・・
 
図は1886年に登場したセフティ・ハンマレスというGun で、たいへん売れたそうです。絵は4thエディションです。S&W トップブレイクは、 このシリーズが最後になりました。あとはハンドエジェクターが登場します。
この銃をイメージして1952年に作られたのが100周年モデル・センテニアルでした。
初期のモデルのみフラット・ラッチになっています。
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ネットでオークションされている実銃の写真ですが、サイドプレート上に4つのスクリューがあるのでファイブ・スクリューモデルかと思っていましたが、トリガーガード前面にネジがないですね。

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同じ出品物です。こんなところに安全マークがあったんですね。

おわりに

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Yoshi さん、素晴らしい写真を有難うございました。
おかげで過去にタイムスリップでき、当時の黒いモデルガンの姿を伝えることが出来ました。
 
なお、この記事は黒色モデル賛美のためではなく過去のモデルガンの歴史を鮮明なる写真で示せたらと思い、書いています。 現在の日本では、金属製の黒色モデルおよび金色でもガス抜けモデル、銃口閉鎖でも金色が退色した銀色モデル、などは ともに銃刀法違反となりますのでくれぐれも法律遵守で楽しみましょう。
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