テキサス・パターソン

ハートフォード新製品、ヘビーウエイト・プラ製モデルガン
写真00

マニアックな会社、ハートフォード(HWS)から歴史的価値のあるモデルガンが発売されました。
テキサス・パターソンです。量産リボルバーの元祖であり、コルト社の元祖でもあります。

日本では、あまり知られていないマイナーな銃を完全なモデルアップで再現しています。
お店で手にしたときは、感激しました。
写真は、すでにブルーイングした物なので購入時はこのような状態ではありません。

パターソン銃は、1836から1840年にかけて製造されたサミュエル・コルト氏の初製品です。コルト氏22歳。日本では天保の大飢饉のあと大塩平八郎の乱があったころです。


写真01

トリガーガードのない、なんとも微妙な姿です。全体的には、このあとから出現する 51ネービーなどと共通な姿をしています。膨らんだグリップが特徴的です。


写真02

トリガーは、普段は折りたたまれていてハンマーを起こすとペロっと降りてきます。 しまう時は、手動で上げます。

当時、すでにパーカッション銃などでトリガーガードは、当り前の時代ですので、この方式は 明らかに目新しさを狙ったものか、後述のようにナイフ使用時に便利なためか、どちらかだったと思います。


写真03

サミュエル・コルト氏が初めて起こしたパテントアームズの刻印も再現されています。刻印から 判るようにパターソンというのはニュージャージー州の町の名前です。会社の住所です。

HWS は、嬉しいことにバレル上面を研磨してから刻印を打っています。この上面だけ、あと処理がなされています。 そのおかげで、ブルーイングなどでこの特徴的な刻印が消えてしまうことが避けられています。 さすがマニアックな会社です。ユーザーの心がわかっていらっしゃいます。


写真04

パターソンの孫にあたる51ネービーもグリップ後方のカーブは受け継いでいます。

コルト氏のパテントアームズ社は、6年ほどで結局倒産してしまいましたが、このパターソンを使用していた テキサスレンジャーからの新たな要請で1847年、コルト・ウォーカーモデルを製作し、今日まで続くコルト社が 新規にスタートしました。ちなみに、S&W 社も一度ボルカニック拳銃の時に潰れています。躓いても再チャレンジができるアメリカの文化を垣間見るようです。


メカを見る

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普段は、黄色の矢印の板ばねでトリガーは上方へ抑えられています。 ハンマーを起こすとシアが回転し腕部分が水色の矢印のように前にせり出し、トリガーを押し出します。 緑矢印のようにトリガーは回転して落下してきます。


写真06

パターソンのあと100年後まで製作されるSAA まで通じる基本メカは、ほとんど出来上がっています。 当時、コリアーのパーカッションリボルバーがあったように、サミュエル・コルト氏はリボルバーの元祖では ありませんが、手作り品ばかりの時代に、はじめて量産された回転式拳銃としてパターソンは歴史に名を 刻んでいます。

写真のようにハンドのバネはフレームに止められています。興味深いです。


写真07

この写真をよーくご覧ください。書籍の分解写真のそばにHWS パターソンのパーツを 並べて置いています。どれだけ本格的にハートフォードが再現しているかよく判ります。完璧ですね。

写真のようにボルトは、CMC 3代目SAA のように亜鉛パーツにスチールを組み合わせて出来ています。


付属ツール類

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パターソンは、初めての現代式量産リボルバーでしたので試験的なツール類も 各種新登場しています。

写真上に見えるのは5連式のフラスコで、一気に火薬が入れられるようになっています。物はイタリアのレプリカ品です。しかし使い難かったのか、この方式は廃れてのちには一個くち方式が一般的になりました。
レプリカのフラスコは弾丸が入るようにはなっていませんが、本物は半分から下に弾頭が入っていて 、こちらも一気に装填できるようになっていました。少しでも早いリロードを目指していたのでしょう。


写真10

パターソンのバレル下には、ローディングレバーが備わっていません。後期には、装着された モデルも出現しますが、ほとんどは別のローディングツールで弾頭を押し込みます。

このツールのお尻は、ニップル穴の掃除針とニップルレンチになっています。


写真11

パーカッションキャップを入れるものです。キャッパー(Capper)と言います。
一個ずつ口からキャップが出てきたのだと思います。

パターソンには、リコイルシールドにキャップ装填用の切り欠きがありませんのでシリンダーを外してキャップを装着します。 後期の銃には、リコイルシールドに切り欠きが出来て、シリンダーを外さなくてもはめられるようになります。


参考書籍

写真12

この本は、ハートフォードの宣伝写真にも載っています。パターソンのことなら最高の本です。
写真も美しく、たいへん良い本だと思います。

ふつうは120ドルくらいで販売されていますが、バッファロービル・ヒストリカル・センターのギフトショップでは大安売りされています。詳しくは私のページの海外買い物(4)に書いています。

BBHC →  http://www.bbhc.org/


写真08

この書籍には溜息しか出ない素晴らしい写真がたくさんあります。 このケース写真のようにして撮影がしたかったです。ハートフォードのおかげで夢が、かないました。


歴 史

テキサスの地図

テキサスって昔は、メキシコ領だったんですね。1836年にテキサス国として独立して、その後米国に 編入されたのです。そのときにメキシコ戦争が起こっています。

テキサスが独立するころ独自で地域を守っていたのがテキサスレンジャーと呼ばれている軍隊です。 その部隊に使用された拳銃なので、のちにテキサス・パターソンと呼ばれるようになりました。 パターソンというのも上述したように会社の場所の地名から来た俗称です。


パターソンの種類

各イラストは、等比率です。背景が透明な gif 画像ですのでご自由に使用ください。

No.5 テキサス・モデル

No.5

36口径のテキサス、もしくはホルスターモデルと呼ばれるものです。
1838年から1840年に製造されました。今回モデルガン化されたものです。


No.3 ベルト・モデル

No.3

31口径、5連発。


No.2 ベルト・モデル

No.2

31口径、5連発。1837年から1840年。


No.1 ポケット・モデル

No.1

28口径、5連発。1837年登場。


No.4 エーラー・モデル

No.4


昔はNo.4 と呼ばれていたようですが、今ではNo.1などの 改良型として ローディングロッドを備えた物をすべてエーラー・モデルとしているようです。株主だった John Ehlers 氏が破産状態にあったパテントアームズを差し押さえ、在庫パーツを使用して改良モデルを生み出した物です。1839年頃からNo.5 にもローディングロッド付きがあります。1843年に会社は倒産しパターソンも生産されなくなりました。


プレ・パターソン

サミュエルコルトが、パターソンの前に作った試作品がプレ・パターソンとして 知られています。それは、バレル下方に折りたたみナイフを備えていました。撃ち尽くしたら これで戦えっていう護身銃だったのでしょう。6連発です。下記イラストもパターソンと等比率です。 ずいぶん大きなものですね。

No.0

シリンダー幅が小さく見えるのは、リコイルシールドに 半分くらい、はまり込んでいるからです。このモデルは、メカ的には、ほぼパターソンと同じものです。トリガーも 普段は折りたたまれています。ナイフを使う時に便利だったからでしょう。このメカのまま、 パターソンが量産化されたのでトリガーガードが無かったのかもしれません。


あとがき

写真13

良いモデルを手にできて感激でした。思ったように写真も撮れました。
こんなに良い物が発売されるのなら、金属オヤジの私ですが、プラ製も許しちゃいます。

ローディングツールやフラスコ、木製ケースなどを購入できる米国のショップを見つけたので、 現在購入中(輸送中)です。届いたら結果を買い物ページに記載したいと思っています。

無事届きましたので、こちらに書いています。 →  海外買物(17)


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