S&W モデル3

CAW スコーフィールド ほか
写真00

半世紀も人間やっていますので、ときおり昔は規制がなくて良かったですねと言われます。もちろんモデルガンの話です。ですが、私は一概にそうも思いません。モデルの種類や選択範囲の多さは、現代の方が素晴らしい世界が築かれています。

昔だったらS&W モデル3なんてモデルガンは、絶対に販売されなかったと思います。マイナーなクラシックガンですから。今は、こんな珍しい物も簡単に購入する事ができて良い時代だなぁと思います。


写真01

3つのモデル3を揃えました。左からCAW スコーフィールド、スペイン・デニックス、マルシンです。右の二つは、S&W モデル3・アメリカン・セカンドモデルだと思います。

実銃のS&W モデル3・ラージフレーム・シングルアクションは、大きく分けて

  1. アメリカン
  2. ラシアン
  3. スコーフィールド
  4. ニューモデル3
の4つに分けられます。
それぞれ口径や機構が違いますが、全部二つ折り式のトップブレイクです。

S&W の製品群は、このあと、ダブルアクション・シリーズの小口径に移行して、Kフレームのハンドエジェクターへと繋がっていきます。このモデル3シリーズが自動的にエジェクトできるから、その後に出てきたスイングアウトシリーズは、手でエジェクトさせなければならないので、ハンドエジェクターと呼ばれました。


写真02

右側は、こんな感じで現代のS&W と違ってサイドプレートはありません。何故かというと、シリンダーが、そう、コルトと同じ右回転です。

ハンドエジェクター・シリーズでは、コルトの特許に触れないために左回転、右側サイドプレートにしたのではないかと思います。左回転にしたために、エジェクターロッドを止めるパーツがバレル下部に無いといけなくなり、独特の エキストラクターシュラウドを持つ形が出来上がっていきます。

左回転だとシリンダー・スイングアウトの方向にハンドからの力がかかるので、コルトより強固にシリンダーを固定する必要があるのです。


写真03

みなさん、トップブレイクをきちんと再現しています。デニックスのモデルガンは、遠目に見て 飾って楽しむというスタンスで製作されていますので、日本製のモデルガンとは出来が違います。
ですが、唯一の金属製ですので、重さでは圧倒しています、そうとうに重いです。


S&W のあゆみ

イラスト

22ショート口径で、世界初の金属薬莢式ハンドガンを発売したS&W は、モデル2で32口径リムファイアに進化します。もっと大きな口径を目指し、耐性の無い今までのチップアップ式をやめ、大口径に耐えられる トップブレイク(上部が分かれる)フレームを造りました。

イラストは、大きさ互換です。最初のモデル1の小ささがわかりますか?上の二つは、坂本竜馬も持っていたことが 確認されています。長州の高杉 晋作が中国で購入した物だと思われます。
竜馬も長生きできたら、きっと、モデル3も持った事でしょう。


ニューモデル3

写真07

これは自分がかつて持っていた六研製無可動プラ製の壱番型拳銃ですが、S&W ニューモデル3ラシアンになります。このモデルを含めた4種類が日本で入手できるモデル3の全てという事になります。

ニューモデル3 は、エジェクト方式が大幅に見直されたモデルで、バレル下の出っ張りが小さくなり銃がスマートになっています。
*-------------<余談>----------------*
昔の文献や弾薬箱を見ますと「壱番型」ではなく「一番形」と記載しています。


写真08

デニックスのモデルと比べるとモデル3の進化がよく判ります。 エジェクター機構が短くなり、かなり軽量化されたことだと思います。バレル軸のネジ止めもシングルに なっています。また、ラシアン・モデルの特徴でグリップの上部フレームに、出っ張りが見られます。


写真09

同じく六研の26年式拳銃と並べてみると、大変印象が似ています。
バレルの閉鎖方式は、そのままS&W 式がコピーされています。

26年式拳銃は、S&W の輸入から脱皮すべく、国産 による初めての拳銃ですので、かなりモデル3を参考に設計されたのではないかと思います。


スペイン・デニックス

写真04

左二つは、シリンダーにインサートが入って改造防止策が施されています。 このような、プライマーでも発火させたら壊れてしまいそうなモデルガンでもインサートが入っていることに驚きます。

一番右のデニックスには、インサートは入っていません。このおかげで、デニックスのモデルは輸入禁止の指導が 行われて、販売されなくなりました。ホームページにデニックスが載っている会社にメールで尋ねて聞きました。


写真18

デニックスは、作りがいまいちですが重さと迫力は最高です。マグナム金属モデルガンと並べても負けていません。両方とも44口径ですが、ずいぶんシリンダーの長さが違いますね。

44マグナムは、昔の設計者が当然生きていない頃の開発でしょうが、同じS&W 社のモデルですので、なんとなく血筋を感じさせるデザインです。


CAW・スコーフィールド

写真05

このモデルガンは、素晴らしい出来です。写真のように実銃のごとくサイドプレートに まったく隙間が見られません。驚異的です。ただ、よく見ると判るかと思いますが、ヘビー樹脂のダマが 表面に見られます。これをペーパーでこすると巣ができるそうで、ブルーイングの大敵です。


写真06

シリンダーは、45口径で製作されているので実物カートのケースだけなら入れることが出来ます。 昔のモデルガンは、どれも径を小さく作っていました。

ときどきスコーフィールドを指して、モデル3だという 記述を見かけますが、そうではなく、モデル3シリーズ全体の一部にスコーフィールドが存在しています。スコーフィールドの方が全体から見れば特殊な存在です。


写真19

スコーフィールドの最大の特徴は、バレル固定ラッチをフレーム側に持ってきたことです。 左のアメリカン・セカンドは、バレル上のラッチの閉鎖に不安があるためか、ハンマー打撃の際はハンマー切れ込みが、 バレルに噛みこんで閉鎖を強化するようになっています(ファーストには無い)。
38口径では、バレル側方式で最後まで販売されましたが、軍隊の採用を目指して、 45口径でより強固に改良された物がスコーフィールドなのです(アメリカン、ラシアンは44口径)。

この変更は、スコーフィールド大佐の案を取り入れた物なので、その名をとってこの銃はスコーフィールドと呼ばれています。のちに出現する英国のウェブリー拳銃も、フレーム側にラッチが取り付けられていて強固にバレルを固定しています。


コルトと対決

写真15

スコーフィールドは、米軍の採用トライアルでコルトのSAA と対決します。
両方45口径ですが、SAA の方が長い薬莢でした。SAA のモデルガンはランパント製です。

こうやって並べてみるとSAA の無駄の無い作りが際立ちますね。スコーフィールドのバレル上のリブは、重いだけで 何の機能もしていないのではないかと思います。


写真16

便利だが複雑な機構を有するスコーフィールドに対し、コルトSAA は、撃つための機能しか 有しておらず、そのため丈夫さが伺われます。

数十年にわたって軍に拳銃を収めてきた コルトの強烈なセールス作戦も想像できますが、45口径弾を発射し、人を倒すという機能のみで選択すると SAA が選ばれたのも当然だと思います。

丈夫で壊れにくい物=正義だ、という感覚は、私たちが思っている以上に保守的である、米国人に深く備わっていると思います。


2000年復刻

写真10

スコーフィールドは、2000年にS&W 社から復刻生産が行われました。これは、その時の カタログです。ファーストモデルが再現されています。(CAW のもファーストモデル)。


写真11

復刻版はハンマーピンがフレームと同一面になっていますね。CAW のほうは、しっかり オールドタイプをコピーしています。


写真12

サイトのミゾは、復刻版よりCAW の方が幅が広いようです。


おわりに

写真17

モデル3は、ロシア向けの輸出に成功し、ロシア軍からの要請に応えるため何度も改良が加えられ S&W 社の大発展に寄与しました。また、革命なった明治日本へも渡ってきました。
このような歴史的なオールド・モデルをおもちゃとはいえ、実際に手にする事ができるという現代は、 ずいぶんトイガン環境が充実しているなぁ・・と改めて感じました。


オマケ情報

写真14

実銃が復刻再販されたおかげでプレゼンテーション・ケースが今でも売っています。
S&W 社のホームページ http://www.smith-wesson.com/ に行って左側のメニューから 「ファイア・アーム・アクセサリー」→「パフォーマンスセンター・アクセサリー」へ飛んでいくと、この ケースがあります。クレジットカードがあれば誰でも日本から購入できます。S&W の通販は、しっかりしています。


写真13

つくりは大変良いです。丸い部分には同サイトで売られている金属板が入ります。 CAW のモデルガンも右下写真のようにサイト部が少しズレていますが、ぴったり収まります。この大きなモデルガンが 余裕で収まっているように、S&W の箱はかなり大きな物です。

単なる木の箱ですので銃刀法にもまったく関係なく 購入できますので欲しい人は挑戦してみてください。もしも、失敗しても私は責任持ちませんのでよろしく。



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