南部式拳銃
The 1902 "Grandpa"

国産初の自動拳銃である南部式拳銃。よく日本の書籍に甲型、乙型と分けられているが 記述は、まちまちである。米国コレクターは3種類を「グランパ(おじいちゃん)」、「パパ」、「ベビー」 と3つに分けている。私は甲型、乙型と言う分け方は後からつけたものではないかと思っている。 当初は、8mm口径の南部式拳銃(グランパ)と7mmの小型拳銃(ベビー)のみであったが、のちに軍採用を目指し 小改良された製品が8mmのパパ南部(陸式拳銃)である。陸式は、トリガーガードがかなり大きくなっている。 グランパとベビーはトリガーガードは同じ大きさだと思う。

グランパの写真を見ることすらめったにないのに この状態の良さは驚きだ。ピッカピカである。グリップのチェッカーもしっかり立っている。
当時は自動拳銃の出始めであり、たいていの拳銃にはストックがつけられるようになっていた。 また、マガジンボトムはルガー拳銃のように木製である。
もともとこの拳銃はルガー拳銃に模範を取っているような感じだ。 全体のシルエット、マガジン、トリガーなど良く似ている。ロック機構はぜんぜん違う。

モーゼルHSc のようにトリガーと手の谷間が一直線ではないので、想像では集弾性能は悪いのではなかろうか?


本来ここにシリアルがあるのだが、見えなく処理している。 許可のある銃なので問題はないそうだが、万人が見るインターネットなので とりあえず伏せている。グランパ南部は1903年から1906年にかけて2,400丁あまりが 製造されたようだ。この銃はシリアルが3桁なので初期の頃の物だろう。 珍しいと言われるベビー南部でも 6,500丁ほど製造されているから、いかにグランパ南部が レアなのかが判る。
フレーム後端の削りこみに機械刃物の跡が見てとれる。

マガジンはアルミ製であろう。新品のようだ。100年前の物には見えない。 ボトムは木製。当時の拳銃としては特に珍しくはない。

3つの輪の刻印は東京砲兵工廠にて製造をあらわす。
リコイルスプリングが左サイドのみなのがよく判る。 左右非対称なフレームは、珍しい。
機械的に見ると片持ちに力が働くので 良いことはない。
フレームの中にバレルフレームがありその中にボルトがある、という3重構造。 作りにくいし精度あわせが大変だろうと思われる。ステアーの昔の拳銃も このようになっている。
エキストラクターやトリガーは、ストローフィニッシュ。

30年式歩兵銃などに見られる模様が彫られている。
分解時に回す必要があるからだが、凝った彫りだ。日本製の銃器には よく見られる。

セフティは、グリップセフティのみ。
マガジンキャッチへかけてグリップが微妙なカーブを描いている。 いかにも日本的だが、マガジンキャッチは分解時に押し込んでトリガーガードを下方にずらさな いといけない役目なので、通常のGun よりも飛び出しているだろう。

グランパの特徴であるストック噛み合わせミゾ。
ストックはモーゼルのように銃の格納も出来るようになっている。 また、長さも少し調節できる。ロック機構は、この写真ではよく判らない。

14年式に通じるデザインが見て取れる。
フレーム左サイドにのみリコイルスプリングがあるため ガイドロッドの端が見える。トリガーガード表面など曲面を多用した美しさがあるが加工は難しいであろう。

素晴らしい状態のフレーム。100年前の銃器とは思えない。
フレーム上の小判のようなものはトリガーバーの支点となるパーツ。矢印は組み立てて 同部品を90度回す必要から入っているものと思われる。
ランヤードリングは固定式(陸式は可動式)。
グリップも素晴らしい状態だ。まさに「お宝」、探そうにも見つからないだろう。
私など写真だけでも震えが来る。実物を見たら倒れるかもしれない。


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