世紀の名銃と呼ばれるM-16、AR-15 は、一言で特徴を言いなさいというならば、
「軽くてよく当たる銃 」だと 言えると思います。よく当たるという部分は、直銃床を装備したストーナーさんの設計のおかげですが、もう一つの特徴である 軽い=アルミ鍛造削り出しのレシーバーを備える特徴は、アーマライト社創立のサリバンさんのアイディアではないでしょうか? ストーナーさんは天才だと言われ、検索するといっぱい情報が出てきますが、創立者のジョージ・サリバンさんは、検索しても さっぱりで、写真すら出てきません。

私はM-16 誕生の功績の半分くらいは、サリバンさんにもあるのではないかと思っています。この項では、彼の作品やその他 アーマライト社の試作品群に目を投じてみたいと思います。


アーマライト社は、今日でいうベンチャー企業のようなもので、航空業界のロッキード社の特許顧問だったジョージ・サリバンさん が創立者で、航空業界の新素材を用いて新しい銃器を作り出すことを夢見ていました。

自身が製作したアルミ製の軽いライフルを 世に出すべく資金提供者を探した結果、やはり航空業界のフェアチャイルド社の傘下で起業することがきました。 サリバンさんの自作ライフルは、のちにAR-1 パラスナイパーと呼ばれます。


また、彼は不時着したパイロット用のサバイバルライフルも手掛けていて それはのちにAR-5 が軍に採用されます。その民間バージョンであるAR-7 は、モデルガンにもなっていますので日本でも有名です。

ある日サリバンさんが自作ライフルのテストをシューティングレンジで行っているときに、やはり自作ライフルのテストで 訪れていたストーナーさんと運命的に出会います。
サリバンさんは、すぐにストーナーさんの才能を見抜き雇い入れることにします。
ストーナーさんの自作ライフルは、その後AR-3 と呼ばれることになります。


AR-1
アルミ軽量ライフル

AR-1 と呼ばれますが、実際はアーマライト社以前から開発されていたサリバンさんのアルミライフルです。 特許図はジョージ・サリバンさん(George Sullivan)のスチール・コーティング・アルミバレルの特許。 この特許を持っていたからAR-10 のトライアルの際にかたくなにこのバレルで臨んだのかもしれません。

アーマライト社には、のちにジェームス・サリバン(James Sullivan)さんというエンジニアが入ってきて AR-15 の設計で活躍しますが、ジョージ・サリバンさんとは名字が同じだけの人です。このジェームス・サリバンさんは、のちに 別会社でルガーMINI 14 の設計にも携わります。


AR-5 、AR-7
サバイバル・軽量ライフル

こちらもサリバンさんのアイディアが凝結した空軍用サバイバル・ライフルです。

AR-5 は22ホーネットという特殊弾丸ですが、一般向けのAR-7 は22ロングライフルを使用します。

AR-7 では、部分的にストーナーさんも特許を取っています。


AR-3 、ガスオペライフル

アーマライト社ができる前から開発されていた、ストーナーさんのガスオペライフル。

長いオペレーションロッドですね。

ボルト形状は将来のM16 を予見させます。また、トリガーガードが テイクダウンされるところは、アーマライトX02 の機構そのものです。


ストーナー・システム特許

昔は、AR-10 に用いられたガス直接噴射システムは、リュングマン・システムと言われましたが、最近では ストーナーさん独自のシステムだと言われています。

この特許図のように、もともとは本体左側からのガス噴射を受けて作動する物でした。 この左側方式は、オランダでAR-10 が量産品に向けた変更が行われるまで続きました。 上部供給システムは、ジム・サリバンさんの設計のようです。

この特許図のライフルは、AR-14 の企画上で出現しています。


AR-15 5.56mmライフル

陸軍からAR-10 の小口径化を打診されたアーマライト社は、ジム・サリバン技師らによりAR-15 として再設計されます。 機構は、AR-10 そのままでやがてチャージング・ハンドルやバレルナットなど完成形へ向けて改良が進んでいきます。 222レミントンの銃弾から223へ更新するのにストーナーさんも関与したみたいです。

どの段階からコルト社製品になったのかは、よく分かりませんが、下記記事を読むとコルト製になった時には、ほぼ現在のM-16 の形が出来上がっていたようにあります。

https://www.americanrifleman.org/articles/2014/2/27/the-first-colt-ar-15-rifle


AR-16 7.62mmライフル

やがてM-16 になるAR-10 には、アルミやプラスチックといった革新的素材と、作動方式も直接ガス噴射という 今までになかったものを使い、未来の銃を目指しましたが、このAR-16 は全く逆に、定番素材のスチールと定評あるガスピストン・システムを使用し、プレス加工で安価に生産できる自由圏のAK-47 を目指しています。

ストーナーさんが退職した後に口径を小さくされてAR-18 へと進化します。AR-18 は、軍用としては採用されることはありませんでしたが、優れたシステムとして各種ライフルの参考にされました。日本の89式小銃にも影響を与えています。


アーマライト社製品群

名 称種 類年 代設計技師
AR-1アルミライフル
1952年サリバンさん
AR-37.62mmガスオペライフル
19??年ストーナーさん
AR-5サバイバルライフル、22ホーネット
1954年サリバンさん
AR-7民間用AR−5、22 LR
1959年ストーナーさん
AR-912ゲージ・アルミ・オートショットガン
1955年ミラーさん
AR-107.62mmアサルトライフル。のちAR-15 へ
1955年ストーナーさん
AR-11AR-3 の222レミントン版 1957年ウィルソンさん
AR-127.62mmショートピストン・ライフル
コルトに直接噴射の特許を売ったため
19??年ストーナーさん
AR-14スポーツライフル・企画のみ
1956年??
AR-15AR-10 の5.56mm 版、のちのM-16
1956年ジェームス・サリバンさん
AR-16のちにAR-18 になる7.62ライフル
1959年ストーナーさん
AR-1712ゲージ・アルミショットガン 1956年??
AR-185.56mmアサルトライフル
1963年ミラーさん
AR-180AR-18 の民間バージョン
日本の豊和工業で生産された
1965年ミラーさん

おわりに

上の表の最後の写真のAR-180 は、ペガサス・マークではなくライオンマークになっています。 1959年にコルトにAR-10 とAR-15 の権利を売った(売らされた?)アーマライト社は、フェアチャイルドの資本も引き揚げ られて別資本の会社になります。 優秀な技師たちも会社を去り、ストーナーさんはコルトへと赴きました。

やがてまた別のオーナーになり、マークもライオンに変わりました。 そうして、アーマライトのブランド名は現代でも残っていて今でもライフルや拳銃を売っています。 下記にホームページがあります。

https://www.armalite.com/

最初に会社を興したサリバンさんは、いつまで会社にいたのでしょう?その後、どのような人生を歩んだのでしょう? ストーナーさんばかりに脚光が当たっていますが、サリバンさんのその後も知りたいものです。