マルシンのウッズマンです。マッチターゲットしか発売されていません。
ウッズマンは、亜鉛製金属モデルガンではマルシンの物しか存在しません。
MGC とコクサイはプラ製のみです。
どうして悲運なのかは、後で述べたいと思います。 たいへんスマートなモデルガンです。 6インチ銃身と4.5インチが発売されました。1978年(昭和53年)のGun 誌に広告が初登場します。 そうです、世紀の悪法52年規制の直後です。
外 観
左にコルトマーク、右側には新たに規格化されたsmGマークと製造年の刻印があります。 52年規制以後のモデルしか存在しません。したがって製品全部にsmG マークが入っているはずです。
1976年(昭和51年)に六研から高級モデルガンである真鍮製マッチターゲットが、すでに 発売されていますので、マルシンも参考にしたかもしれません。銃身長のバリエーションは同じです。
六研の物が、セカンドシリーズのボタン式マガジンキャッチにフラットトップのサードシリーズの スライドが組み合わされているのと違い、マルシンはきっちりサードシリーズを正確にモデルアップしています。 特にトリガー形状は実物を良く再現しています。六研の10分の1という値段ですが、安くても負けていません。
実物のコルト・ウッズマンは、1st、2nd、3rd と3期に分けられます。下記英語ページ、左側・上から5番目のゲスト・コレクションに大量な写真があります。
https://www.colt22.com/index.html
マッチターゲットは、その名のとおり競技用のため銃身下部が重りになっています。
1970年代の望月三起也 先生の漫画「ワイルド7」でヘボピーの使用銃として当時の子供には身近な存在でした。
余談ですが、おおむかし1960年代のモデルガン創世記に、中田商店から二つ折り式コルク銃のウッズマンが 販売されていました。それは、実銃よりもかなり大きかったそうで、ひょっとしたら望月先生はそれを見て 主人公にウッズマンを持たせたのではないだろうかと私は思っています。大口径の銃だと思い込んでいたのかもしれません。
特異なメカニズム
このマルシンのモデルガンは、至上まれなるメカを持っています。スライドを引くと写真位置でストップします。 マガジンが空だから止まっているのではありません。これが正常動作です。 そのあと、トリガーを引くとスライドが前進しカートをくわえ込んで閉鎖します。なんとも不思議メカです。リアル志向の モデルガンマニアからは、馬鹿にされたかもしれません。中途半端タニオアクションです。
これは、52年規制がハッキリしないころに開発されたせいです。国会では、改造防止のモデルガン規制が通過しましたが 実際の細則は、総理府令にて公布されることになり、まったく情報のないまま時が過ぎ52年も終わろうとするころ 発表されました。したがって、マルシンとしては開発途中のウッズマンが、販売できるものなのかどうか、判からない状況だったのでしょう。 そこでしかたなくこのような 「どんな法律になっても絶対発売できるだろう」 という設計に変更されたものと思います。
そのことは、下の写真のようにパンフレットにも記載されています。
バラしてメカを探る
マルシン・ウッズマンは良くできています。
実物同様の分解方法です。まずは、スライドを引いた状態で、左写真のスライド上のボタンを押してスライドを戻し、リコイルスプリングをロックします。上写真がその状態です。まだスライドはバラせません。
書籍写真とそっくりですね。マルシンのスライド内側は、あとから切削加工されていて、正確動作に努力が見られます。
商売上は儲けにならないモデルだったのかもしれません。
次にグリップをはずし、矢印のピン2本を外して後部をバラして、はじめてスライドが抜けます。 こりゃぁ大変です。実銃のメンテも閉口するとターク氏がGun 誌に書いています。やはり撃ったらスライドを簡単にバラして掃除したいですね。 こんなに面倒な銃も珍しいです。モデルガンもこの面倒くささを、きっちり再現しています。ジョン・ブローニングを含めた3人が開発に携わったせいかもしれませんね。なんだか、ちぐはぐです。
マガジンキャッチは、スプリングが折れていることが多いようなので触らないほうがましです。折れていても動作できますが、バラすと 組み立てられなくなります・・・経験済みです。
実物同様な Magキャッチ
マルシン・ウッズマンのマガジンキャッチは、起こすとロックされてマガジンがするっと抜けます。
私はずっと「これはマルシンの失敗設計だ」と思っていましたが、友人から指摘されて
はじめて「実物同様だ」と思い知らされました。
写真の中のモノクロ写真のように実物も後方にロックされるように出来ています。
ご意見寄せていただき有難うございました。
クリックボールにご注意
セフティは、右側のCリングで止まっています。はずしてみてビックリ。小さなボールがこぼれ落ちました。 無くす危険大の部分です。Cリングといい、ボールクリックといいMGC 製品みたいです。
紛失危険っ!
小さなスプリング
ほとんど飾り状態のスライドストップも小さなバネが入っていて紛失危険箇所です。
逆作用メカ
これが変形スライドアクションの心臓部です。シアは、存在せずトリガーバーとハンマー?のみです。 ハンマー状の物は、スライドを引っ掛ける役目をします。書籍上の線がスライドとフレームの接点だと思ってみてください。
実銃は、ちゃんと36番にシアがあり、トリガーバーがそれを引くことによりハンマーが落ちる構造です。
夢のあと・・の検証
マルシンのウッズマンにもシアの穴があります。ただ穴があるだけで遊んでいます。
当初の設計がシア付きの
リアルモデルだったことの証明です。
ちゃんとフレーム裏には、ガバメントのようなシアスプリングを止める溝も付いています。 なんだか悲しいですね。いつでもリアルメカに変身できそうなのに、とうとうリアル・ウッズマンは出現しませんでした。 52年規制も銃身分離型でないものは、OK となり、南部やルガーのように銃身が外せないものはリアルメカで販売され続けました。 このウッズマンも、もうすこしあとに設計が始まっていたらリアルメカで名品と呼ばれていた可能性大です。
キャップ式カートリッジ
キャップ火薬をさかさまに差し込んで使用したのですね。
真ん中はダミーの22ロングライフルです。実物のほうが小さいですね。
プラグファイア式
カートリッジ
後期には、プラグファイア式カートになりました。それがブローバックモデルです。
比較のために22LR ダミーカートを置いています。
プラスチックの箱は、火薬をセットするために付属していたジグです。
時代が・・
スライド合わせ目もしっかりしていて良い造りです。リアサイトは、壊れやすいようで、無くなったモデルが よくオークションに出ます。
実にスマートなスタイルで、きれいなモデルガンですが、作動方式がいまいちなので賞賛を浴びることもなく消えてゆきました。 リアルメカの準備は完全に出来ているのに、残念です。
でも、もっとも悔しかったのは、これを設計した本人でしょう。すごいセンスの持ち主だと思います。 ほぼ実物のような構成で変形スライドアクションを実現しています。逆ハンマーは見ごたえありました。 設計者自身も、リアルメカへの変更指示が、 「いつ来ても大丈夫だ」と思って造ったのかもしれません。
残念な形で世に出たマルシンウッズマンですが、その端々に「時代」を感じました。
参考書籍
NRA (全米ライフル協会)の分解図集には、セカンドシリーズしか登場しませんが、こちらのガンダイジェストの 分解図集にはサードシリーズが載っています。写真の本は、長物も一緒に掲載されているので分厚いですが、ハンドガンだけの バージョンもあります。日本でもアマゾンで普通に購入できると思います。NRA とガンダイジェストの両方があれば、ほとんどの銃の 知識は得られると思います。
おまけ