写真00
元は六研で計画されていたモデルですが、販売に至らず、52年規制のあとにCMC から製品化されました。 おそらくCMC の長物の中では一番売れたのではないでしょうか?
名品、名作だと思います。

また、この姿がKar98 のスタンダード・スタイルとして多くのトイガンのモデルになりました。 結果、どのメーカーも同じ形になっちゃって少し残念です。


ファーストロット

写真01 私は発売前に予約して購入しましたのでファーストロットを持っていました。それは、以後の物とは違ってボルトハンドルの 切り込みが長円で小さい物でした。また、ストックにはイーグルマークは入っていませんでした。

弟が続いて購入したものは、ハンドルの切れ込みがもっと大きくなっていて、ストックにはイーグルマークが入っていました。 この写真の物は間違いなくファーストロットです。


写真32 初期型のクリーニングロッドは、ストックに突き刺すタイプですが、のちにはネジ込み式に変更になっています。
写真02 のちにチェコで生産されたマウンテントルーパーもモデルガン化されています。
写真03 CMC 廃業後もタナカさんからモデルガン、ガスガンが発売されました。また、その流れでCAW からカスタムGew 98 も 発売されました。
写真15 Kar98 は、バレル長が600ミリで第二次大戦の標準型になりましたが、イギリスや日本でも同じくらいに落ち着いていました。 一次大戦の時のような長いライフルは、消えていきました。

細かな部分ですが・・

写真05 写真06
K98 の方の刻印はモーゼル社オーベンドルフ工場を示すbyf が、G33 の方はチェコの ブルーノ工廠を表すdot が見て取れます。
写真04

だんだん分ってくると重箱の隅に気づきます。2次大戦はじまった後は年号表記はたいてい 下二桁のようです。byf に42 だったらよかったのですが・・。 チェコの方は4ケタでOKです。

写真の本は超マニアックです。私は3冊組で買いましたが、今はボリューム2の2冊のみ 販売しているようです。こちらから買えます↓

https://www.thirdpartypress.com/

写真04 写真07
専門書を読んでいくと。知らなくてもよかったことを知ってしまいます。 写真右のモデル98 の文字はフラクトゥールというドイツ語の書体で ナチスが正式に採用したものですが、Kar98 に見られるのは ザウエルゾーン社とエルマ社製の物のみに見られます。
残念ながらCMC のモーゼル・オーベンドルフ製には見られません。
フラクトゥール書体で書いてみました →  𝔐𝔬𝔡 98
写真08 写真19
CMC のKar98 は日本で初めてのモデルガン化でしたので、スリングなんて売っていない、存在さえしていない状況でした。そこで CMC は純正で革スリングを付属してくれました。今見ると貧弱な革ですが、これをストックに通すと なんとも本物っぽく思えたものでした。右側は現在一般に売っているもので格子模様が入っていますが、実物もこうなっていたようです。

写真右側は、六人部さんお得意のボルトストップ部分で、ミロクの38式や中田、タナカ等旧日本軍ものすべてのボルトアクションがこのようなネジで止める形式のボルトストップを装備しています。実銃と違うところですが、製作費を考えると我慢しましょう。


写真20 写真21
六人部さんは1940年以降のカップ型バットプレートモデルを選択しましたが、それまでのKar98 は普通の 鉄板プレートでした。合板ストックが流行りだしたのと関係があるのかもしれません。 おかげでCMC 以降に登場したトイガンのKar98 は、ほとんどカップ型を装備しています。 ちょっと画一化しすぎました。
写真のエアガンは中正式(中国ライセンス生産モーゼル)。

登場広告

写真16
1979年3月(昭和54年)のGun 誌に
初登場しました。

法律改正による大きな規制が昭和52年ですから、新規制に対応した商品として世に出るまで 2年を要したということですね。

CMC Kar98 は、規制直前の同社カタログに掲載されていましたので、設計は終了していたものと思われます。 しかし新たな規制をクリアするためにしばらく生産は見送られたのでしょう。

クリック拡大できます → 


メ カ

下の実銃の物と同じように並べてみました。銃剣部はバレルから外せませんでした。バレルがやや膨張しているのかもしれません。 バレルは鉄パイプを芯にして亜鉛で出来ています。ファイアリングピンは前後逆置きでした。

ほぼ実物同様、と言いますか少ない部品なのに高機能な実銃をよく再現できています。
モデルガンのチャンバーが別部品なのは、smG規制で超鋼を鋳込まなくてはならなくなったからです。 すべてのメーカーがこの部分に苦慮しています。


六研との関係

六研取説写真 もともとKar98 は、六研が亜鉛合金モデルガンとして1975年に広告を出したものです。 しかし、プロジェクトはスタートしたものの何らかの理由で頓挫してしまい、前金を払った人などに トラブルもあったようです。写真はその時のカタログです。この時にすでに外部発注部品として出来上がっていた バットプレートは、4年後にCMC から製品が復活し、販売されたときに六研刻印のまま流用されました。
写真14 その分解図を見ますと、のちにCMC によって製品化されたものと少しの違いを見ることができます。

図の上側が六研の物で下側はCMC の分解図です。赤矢印のように六研では飾りのエキストに小さな本物が付いた構造でしたが CMC では実物同様の構造に変えられています。また、実銃のKar98 を語る上では見逃せない安全のための第3のラグがCMC では 省略されてしまいました。緑の矢印です。青い円はバレルの止め方に違いがあります。

六研のプロジェクトについては、下記に詳しく書いてみました。別ページで開きます。

六研Kar98 の資料

バットプレート刻印

写真09
左から六研刻印、CMC、タナカワークスのバットプレート刻印です。タナカとCMC はイーグル刻印が同じ感じですね。 この他にもCMCからタナカへ販売が移ったときに使用されたと思われるCMCの上から2重線で取り消したものがあります。

キヨノアームズ・イラニアン

この広告は、Gun誌 1979年11月号 に載ったものです。キヨノアームズさんが、CMC K98 をカスタムして販売していました。 当時私は20歳くらいで、このイラニアンを購入しました。 中田商店のカタログに六人部さんが作った短いK98 が載っていて、それに憧れていたからでした。 その後、Gun 趣味も終わってしまいイラニアンは手放しました。

あれからもう40年近くたった先日、オークションで イラニアンを見つけました。出品者は素人でしたが、写真を見て私はすぐに分かりました。 あまり知れ渡っていなかったのでしょう、幸いなことに手ごろな価格で買えました。 手に取ってみると、なんと驚くことに昔、私が持っていた個体そのものでした。 いやぁ、驚きました。数十年どんなオーナーのもとにいたのか判りませんが、世の中巡り巡って 帰ってくるなんてことがあるんですね。感動しました。その晩は、なんだか長い旅が終わったような感慨にふけました。


写真11
こちらがそのイラニアンです。ストックの傷の模様を覚えていましたので、むかし私が持っていたものに間違いありません。
写真12 これくらい長さが短くなっています。

写真13 ストックには、キヨノ・アームズ・カンパニーでしょうか?
KACの刻印が打ってあります。

イラニアンについて

写真33

中田写真 上写真は実銃のイラニアンですが、ネットで調べるとチェコが指導してペルシャでライセンス生産されたもののようです。

短い方はモデル49と呼ばれています。チェコの G33 のように短いリアサイトではない長いものが使用されています。 ストックのプレートは紛失されているものが多いようです。

中田のカタログのモーゼルはアラビア文字が見られ、このストックが使用されていると思います。


実銃について

図30 Kar98 がどれだけたくさん短期間に生産されたかをエクセルの表で表してみました。 生産数と期間は、おおむねウィキペディアから引用しました。

アメリカのガーランドを基準にヒトます50万丁で書いています。こうやって見ると、どれだけたくさん作っているんだと 驚きます。この短期間にそれだけ作れる工場があるのもすごいですね。 また、第一次世界大戦から考えますとドイツって国は、鉄砲たくさん作って、兵隊たくさん死んで、2度とも大戦に負けて、なおかつ2018年現在でも ヨーロッパでは一等国であるという事は、すごいなと感心します。


マウンテントルーパー

写真29 発売から5年たち、1984年4月(昭和59年)には、初めての関連製品としてマウンテントルーパーが発売されています。

実銃では、第2次大戦当時チェコスロバキアが作っていたVz33 というバレル長 500mm のカービンをドイツが国を占領してそのまま生産させたもので 名前をGew33/40 と名付けられドイツ軍に使用されました。1933年設計で40年採用の意味です。

2019年現在、タナカから発売されているエアガンのGew33 には、左側にスコープマウントが付いていますが、もともとのCMC 製品には マウントはついていません。その方が実銃に似ていますが、少数にはマウント付きもあったようです。

ネット画像検索でスコープの付いたGew33/40 を見つけたので上げておきます。

https://www.auctionzip.com/auction-lot/Rare-Experimental-World-War-II-Nazi-G33-40-Sniper_694574220D/

pic_17

こちらにもあります。

http://www.deactivated-guns.co.uk/detail/G33_40_rifle.htm


タナカと比較

写真23 写真上がタナカのガスガンです。下がCMC のマウンテントルーパーです。山岳警備のための銃でストックには、 ブーツの氷を落とすための保護プレートが付けられています。
写真24 上左のタナカのようにCMC も刻印はあるのですが、ストックのカットがKar98 のままで刻印が見えなくなっています。 右下は、実銃写真です、ストックのカットがCMC と違います、
写真25 リアサイト周りのハンドガードの形状は、CMC より上のタナカの方が実物に近いです。一番下が実銃写真。
写真26 実銃のコッキングハンドルは、軽量化のために中身がえぐられているのですが、CMC も若干浅いですが雰囲気は醸し出されています。タナカ・ガスガンもロットによってはこういう処理がされています。

バヨネット入りません

写真27 CMC やタナカのモデルガンは銃剣が取り付けられないものが多いです。取り付け部が少し幅広いので ヤスリをかけてやると上のイラニアンのように装着できます。

銃剣は上が実物、下がウインドラスの真鍮製。いずれも実銃と違いクリーニングロッドを外さないとバヨネットの 装着は難しいです(モデルガンのロッドは太い?)。


カート

写真31 私がファーストロットを購入したときには、単に袋入りだったカートは、いつの間にか格好の良い紙箱に入るようになりました。 下左は、松栄のダミーカートを比較のために置いています。本当のドイツ軍のクリップは松栄のようにリブが3個あります。

おわりに

写真28 業界初のモーゼルライフルのモデルガン化は、銃器マニアだけでなくドイツ軍の軍装マニアにもすごく役立ったのではないでしょうか?多くの人を楽しませ、コピー品も数多く出回っています。Kar98 はいろいろな形が実銃では存在しているのですが、トイガン界の Kar98 の形を標準化してしまったという意味ではCMC の製品は功罪合わせ持つものになってしまいました。

また、それはゴールを見なかった六研 Kar98 が業界標準になったとも言え、当初の設計の優秀さを表しているものだと思います。


写真は上からCAW 、CMC、PPSガス、ダブルベル・ガス、CMC、キヨノ、タナカ・ガス。

おまけ分解ビデオ


分解図

分解図